イマドキのコンテンツも盛りだくさん!?

2019.07.01

イマドキのコンテンツも盛りだくさん!?
"まちなか動物園"で遊びながら学ぼう!

変わりゆく動物園の姿を追うならば、もう一つ欠かせない場所があります。2006年から「動物たちと人に優しい動植物園」をテーマに大規模なリニューアル工事が進んでいる「福岡市動物園」です。天神や博多駅からも近い"都会の動物園"として多くの人で賑わっていますが、リニューアル後は環境エンリッチメントを取り入れた生息地別展示エリアや動物についてより楽しく学べる施設が登場し、新たな鑑賞スタイルを提案しているそうですよ。

遊びながら動物を学ぶ「動物情報館ZooLab」

2018年10月にリニューアルされた「福岡市動物園」のエントランスにあるゾウの門をくぐると、まずお目見えするのが巨大なアジアゾウの骨格標本!その向こうには、液晶モニターやプロジェクターが設置され、およそ動物園とは思えない内観に驚きます。ここ「動物情報館ZooLab」では「動物園をもっと楽しく、動物にもっと詳しくなれる」コンテンツが用意されているんですよ。

園内マップである「いきものマップ」は、模型で表した地形にプロジェクションマッピングで施設案内を立体的に投影。食べ物、模様、体、季節の植物のアイコンにタッチすると、大きなスクリーンに動物の説明が表示される。(コンテンツ内容は定期的に変更)

①バス型の映像ブース「どこからバス」。全国的にも有名な地元クリエイターやコンテンツ企業が製作しているだけあって、映像のクオリティーもかなりハイレベル

4つのブースで構成された「体験ラボ」は名前の通り、触ったり、鳴き声を聴いたり、ゲームをしたりと体を使って学べるコーナー。

マイクに向かって動物の鳴き声をモノマネすると、園内の動物の姿が映し出される②「なきごえアート」

草食動物と肉食獣の生態系のつながりがゲームをしながら体感できる③「パクパクひろば」

キリンやカバ、ペンギンなど、ユーモラスなキャラクターが出題するクイズに答える④「ズーチューバー」

1階にある「どうぶつデスク」には、動物相談員が常駐し、動物に対する疑問もその場で教えてくれる。「野鳥のヒナが巣から落ちていたがどうすればいいのか」「畑がカラスに荒らされているので困っている」など、一般から寄せられる電話相談にも対応。デジタルばかりではなく、こうした触れ合いの場も設けている。

ブースごとに映像と音を組み合わせた仕掛けが用意されているので、大人も子どももついつい熱中してしまいます。五感をくすぐるコンテンツと組み合わせることで、子どもはもちろん、大人にも動物の知識がすんなり入ってくるのもミソですね。
アイドリングが十分できたところで、いよいよ園内へ。

動物福祉を考えた"複合展示"にも注目!

20年計画でリニューアルが進められている園内。
すでに整備済みのエリア「アジア熱帯の渓谷エリア」をのぞいてみましょう。

まずは、アジア熱帯の渓谷エリア「アジア熱帯の森」へ。オランウータンとシロテテナガザルを同じ空間に同居させた試みが、動物園における飼育動物の生活環境への取り組みを評価する賞「環境エンリッチメント大賞」に表彰されたそうですよ。(同居の実施は不定期)

高齢なこともあり、寒い日は室内で過ごすことが多いボルネオオランウータンのミミ。おしゃれなハンモックは古くなった消防ホースを飼育員さんが編んだもの

シロテテナガザルのアイちゃんとキナコちゃん。二人は嫁姑の関係だが幼い頃にやってきたキナコちゃんがアイちゃんに懐き、今では本物の親子のように仲良し

広報の豊田彩子さんによると「オランウータンとシロテテナガザルは、仲が良いから一緒にしているわけではないんです。違う品種同士が適度な緊張感を持って過ごすことで、環境をより自然に近づけるという試みです。今は月に数回一緒に展示していますが、こんな風に同じ空間で棲み分けをする様子が観察できるのは日本初なんですよ」人間、いや動物模様が垣間見えて興味深い展示です。

ファンの心をつかむ遊び心たっぷりの仕掛け

続いて、「アジア熱帯の渓谷エリア」のコツメカワウソ舎へ。こちらは園内で人気が高いスポットの一つで走ったり、泳いだりと忙しく動き回るコツメカワウソの家族をじっくり観察できるんです。カワウソが遊び道具にと設置されたロープをくわえて、ぐるぐる回る様子は、多くのファンをトリコにしたそうです。カワウソがこんなに遊び上手な動物だなんて、意外な一面を間近で見学できるのも動物園ならではですね。

人気者のカワウソ家族。透明のトンネルはリニューアルの際に設置されたもの

その他にも、オランウータンとシロテテナガザルの空中観覧デッキやタワーなど、さまざまな角度から動物を観察できます。

ヒョウ舎では、見上げるとアクリルの天井でのんびりとくつろぐヒョウを見ることができる

驚くほど鳥との距離が近い放鳥舎。飼育員でもめったに見かけないアオバトを発見するとラッキーというジンクスも

園内を巡る楽しみはまだまだあります。実はこんなフィギュアも隠されているんですよ。「え!こんなところに!?」という場所にカエルやヘビ、マレーグマなどがいるので、ぜひ探してみては?

このカエルフィギュアは園内に3体いるそう

マレーグマ舎の上を見上げるとギョッとする仕掛けも!

そのほか、日常的に通えるようレストランとショップは入場券がなくても利用できるようになっています。ご当地メニューやオリジナルアイテムが充実しているのも、九州の玄関口・福岡市で観光客を意識したアイデア。海外からの観光客も年々増えているそうです。

レストラン「カフェ ラソンブレ」は地元の明太子メーカーとのコラボなど地産地消を意識したメニューが味わえる。自然をモチーフにしたアートな内観にも注目だ

「ギフトショップ プチモンド」のオリジナルグッズ。大人の女性にファンが多いデザイナー「ジュリア・ガッシュ」のイラストを使うなど、今までの子ども向けとは異なるアプローチのアイテムも評判

テクノロジーや来園客へのアプローチなど、新たな要素を導入している福岡市動物園。
学ぶ場所としての動物園にエンターテインメント施設としての楽しみ方が加わり、さらに進化した印象を受けました。

どの動物園もお話を聞いて巡ってみると看板一つ、獣舎の中のつくりにもさまざまな意図が込められていることに気づきます。
動物の息遣いを間近で感じながら、環境についてじっくり考えを巡らすひととき。それは、いくつになってもかけがえのない時間なのではないでしょうか。

福岡市動物園のエントランスにある「ゾウの門」。もともと1933年東公園に開園した旧福岡市動物園に建てられた正門で「ゾウの門」として親しまれていたものがリニューアルを機に再現したそう。動物園閉園後には同じ土地にあった福岡中学校で、さらにその後に移設された馬出小学校で保存されていたという。1949年には福岡市登録文化財に認定された。

福岡市動物園

〒810-0037 福岡市中央区南公園1-1
TEL:092-531-1968(総合案内所)
HP:http://zoo.city.fukuoka.lg.jp/zoo/
※園内では楽しいワークショップも随時開催中。詳しくはウェブサイトで確認を

前編は、“動物と人の幸せな未来”を考える個性派動物園に注目。よく晴れた休日、動物の生態にのんびりと触れながら、その向こうにある“動物と人”の未来に少しだけ目を向けてみませんか?

前編はこちら