2019.07.26
わざわざ行く価値アリ!エッジの効いた立ち飲み店
仕事を終えての帰り道、もしくは待ち合わせまでの空き時間、あなたならどう過ごしますか?
酒屋の一角で立ち飲みを楽しむ"角打ち文化"が根強く残る福岡だけに、「ちょっと一杯ひっかける」なんて声が多いのではないでしょうか。とは言え、年季の入った老舗角打ちは初心者には少しハードルが高め。でも、行くからには会話を楽しみたいし、飲むお酒にもこだわりたい。一人でも安心して通えて、かつ、お酒プラスαの楽しみが待つ立ち飲みバーへご案内します。
昼から飲めて日本酒も充実な"タチノミスト"の店
まず1軒目に行ってみたのが、角打ちをこよなく愛するあまり立ち飲み酒場をオープンしてしまった"タチノミスト"落水ケントさんがオーナーを務めるお店です。角打ち発祥の地と言われる北九州出身の落水さんは「福岡に立ち飲みの文化を浸透させたい」と警固に「MEGUSTA(メグスタ)」を出店。その2店目となる赤坂駅徒歩10秒の「NEOMEGUSTA(ネオメグスタ)」へお邪魔しました。こちらは警固の店舗よりも駅に近い(ほとんど隣!)だけあって、一見さんも多いそう。さまざまな年代のお客さんが集う様子は、まさに「大人の社交場」といった雰囲気。
楽しめるお酒は、ビールにハイボールはもちろん、日本酒や焼酎、ワインなど種類も豊富でほとんどがワンコイン以下。特に日本酒は、その時期のオススメをセレクトしていて、ツウが喜ぶ銘柄も揃っています。気になるお酒のアテは、旨味たっぷりの塩サバを燻した「塩サバスモーク(180円)」など、しっかりと手が込んでいる一品ばかり。これでお値段が180円〜380円というから、立ち飲み恐るべし!
東京からの友人と訪れたという常連さんにお話を聞いてみると、「今日は近くでランチした後に、カフェに寄る代わりに来ました。ここなら、駅も近いし誘いやすい。」 初めて立ち飲みを訪れたというご友人も「待たずに飲めてサクッと帰ることができるのでイイですね。昼から飲んでも帰って夕食を作る余裕がある。近くにこんな店があって羨ましい!」と満足の様子。
店内を見回してみると、初対面のお客さん同士で会話が弾んでいるテーブルもチラホラ。「NEOMEGUSTA」の店長の原義一さん曰く「お客さん同士で会話が生まれるように向かいとの距離が近いL字テーブルを取り入れたり、ドリンクだけセルフサービスにして人の動きを作ったりと工夫しています。立ち飲みのいいところは、やっぱり人と人がつながるところ。一人で来てもコミュニティができるところですね。」
「NEOMEGUSTA」では、周囲の店と提携した「はしご酒イベント」も開催しているそう。一度飛び込んでみれば、新たな世界が広がりそうですね。
NEOMEGUSTA(ネオメグスタ)
〒810-0042 福岡県福岡市中央区赤坂1-10-16 ソピア赤坂ビル 1F
営業時間:13:00〜24:40/不定休
TEL:050-5327-5333
HP:https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400104/40048131/
物語のあるナチュラルワインとコーヒーを味わう
賑やかなお酒もいいけれど、少しの静けさを味わいたいなら「ECRU.」へ。こちらでは、オーナーの原田達也さんがセレクトした「ナチュラルワイン」がいただけます。「地球にも、大地にも、ブドウにも、人間にも優しい」と表現されるナチュラルワインは、化学肥料や除草剤といった化合物に頼らない栽培や醸造によるもの。原田さんはパッと来てパッと飲める店にしたいと立ち飲みスタイルを選んだそう。オーダーは予算や好みを聞きながら提案してくれます。「ワインを選ぶ基準は僕が美味しいと思ったもの。あとは造り手さんの姿勢ですね。うちで扱うのは、美味しいワインを造るために信念を持って取り組んでいる人ばかり。そんな人が造るワインには感動があるんです。」
そう言って出してくれたワインは、どれも香りや酸味など個性の違いが際立っているものの、舌に刺さることなく余韻がとてもふくよか。原田さんはあえてサイドメニューを置いていないそうですが、確かにおつまみがなくて正解な気がします。そのくらい味わいが豊かなんです。
もう一つのメニューである豆を挽いてから淹れるコーヒーも、作り手や土地の魅力を生かした高品質なスペシャルティコーヒーからお店の雰囲気に合うものを選んでいるそう。「昔からコーヒーとワインに共通点を感じているんです。両方とも年に一回完熟を迎えるフルーツですし、買い付けるインポーターさんとか酒屋さんとか、僕みたいな末端まで、造り手と同じ熱量が共有できるところも似ている。うちに来られるお客様も同じです。いろんな職業の方がいらっしゃいますが、やはり皆さん、どこか感覚が鋭い人が集まっている印象です。ここでビジネスの出会いがまとまることもありますし、ナチュラルワインに触れて人生が変わる人もたくさんいます。それくらいこの造り手の考えが本質を突いているんです。」
造り手に想いを馳せながら、じっくりと一杯に向き合う。そんな時間を過ごす楽しみに気付いたら、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?
ECRU.(エクリュ)
〒810-0001 福岡市中央区天神3-4-1 1F
営業時間:12:00〜24:00/日曜休み
TEL:092-791-6833
HP:http://www.ecru-fukuoka.com
ビールというカルチャーに酔いしれて
暑い時期に恋しくなるビールですが、いつもの銘柄から一歩踏み出して、エッジが効きに効いたクラフトビールを味わってみませんか?住宅街の細い路地を抜けた先にある「BEERSONIC」は、オーナーの深堀成吾さんがセレクトするクラフトビールの専門店。元々はサラリーマンをしていた深堀さんが旅先のポートランドで出会った光景に触発されたのがオープンのきっかけだとか。曰く、「ビールは味だけではなくカルチャーなんですよ!」
その意味は、冷蔵庫の中に並ぶクラフトビールの数々を見れば、なんとなく伝わってきます。ラベルだけとってみてもシンプルなものからポップなもの、シュールなイラストや写真だけのものまで、個性が強いラベルはまさにアート!レコードショップに来た時のように、思わずジャケットだけ見て衝動買いしたくなります。「そうなんです!僕はラベルのデザインも大事だと思っています。それに、ビール自体はサイエンスでもあるんです。ホップの組み合わせや醸造方法次第で味や酸味、コクなどのバランスが変わってくるんです。」
アートとサイエンスが詰まったビールは、さらに飲む人の会話にも化学反応をもたらします。「うちに来る人は、あまりビールの話はしないんです。大体音楽とかカルチャーの話で盛り上がっている。観光客の方もいらっしゃるので、福岡の街ネタも多いですね。それに、不思議と愚痴をいう人もいない。ビールをシェアしているうちにいつの間にか初対面の人同士をつなげてくれるんです。」
なるほど!見知らぬ人をくっつける引力こそが、深堀さんがポートランドで知ったビールの素晴らしさなんですね。「やっぱり、ビールってかっこいいんだぜ!って知って欲しい。」そう話してくれた深堀さん、最後に「実はビールがないと生きていけないというほど好きじゃないんですけどね。」という衝撃発言が!それなのにクラフトビール専門店をオープンするとは、一番エッジが効いています…。
オチがついたところで、今宵はお開きにいたしましょう。
BEERSONIC(ビアソニック)
〒810-0011 福岡県福岡市中央区高砂1-18-2 高砂小路103
営業時間:15:00~20:00、土・日13:00~17:00/祝日休み、不定休
TEL:092-707-3921
HP:https://www.beersonic.com
まとめ
福岡に最近増えてきた立ち飲みの中でも、特に尖がった印象の3店でしたが、その根幹に共通しているのは、自分が惚れ込んだお酒やスタイルを知ってほしいという情熱とお酒を飲む時間そのものを楽しんでもらいたいという想い。
カウンターの向こうの店主との会話が、何よりもお酒を美味しくしてくれる最高のアテではないでしょうか。
ワイワイ賑やかに過ごしたい日、じっくりと味わいたい日、好きなものを語り合いたい日など…。
気分によって、使い分けてみては?