コウケンテツ×暮らしと道具

2019.11.11

コウケンテツ×暮らしと道具
"大名で見つけた、アパレル編"

料理研究家として食に携わるコウケンテツさんが、仕事を超えて惚れ込んだ"道具"たち。その向こうに見える作り手の思いとともにお届けします。

コウケンテツさん

コウケンテツ

出身は大阪府、現在は東京都在住。お母様である韓国料理研究家、李映林さんのもとでアシスタントを務めた後、料理研究家として独立。韓国料理、和食、イタリアンと幅広いジャンルで活躍中。福岡ではRKBの料理番組「たべごころ」でもおなじみ。

カタリザーノのシャツ ※時期によって店頭に出ない場合があり。入荷状況はブログで確認を。

遊び心を刺激してくれる
pannaのシャツ

今回は連載2回目にして、思いきって「シャツ」を選んでみました。料理研究家という肩書きとは一見関係なさそうでしょ?でも、僕がモノづくりに関心を持つきっかけの一つになったのが、このシャツなんです。
シャツに出会ったのは、福岡市にあるセレクトショップ「panna」。RKBの料理番組「たべごころ」の収録がスタートしたばかりの頃だったので、9年前ですね。福岡の街を知りたくて歩き回っていたら、店構えとショーウィンドウのアイテムの格好よさに釣られて、ふらりと飛び込んでいました。そこで初めて購入したのがシャツなんです。最初はシンプルな白シャツを購入したかな。それから通うたびに、珍しいカラーリングのチェックシャツ、ドレッシーなシャツなど少しずつ増やしました。

何がそこまで魅力なのかって? それは、袖を通してみると分かります。まるであつらえたように、僕の体型にぴったりなんです。僕は首と手が長くて、既製品ではなかなか合わなかったんですけど、これは動きやすくてシルエットもきれいに出る。それに、柔らかくて着心地も良いし、生地も丈夫!
「いつも同じシャツ着てますよね」って言われるくらい着倒して、家でガシガシ洗濯しているのに、少しも型崩れしません。

このシャツを勧めてくれたのが、pannaの店長の清水達也さん。初対面なのに僕の体型や好みを見抜いて、「これ似合うはずです」って手渡してくれたんです。それから着こなしのポイントや職人のバックグラウンドについても丁寧に説明してくれて。当時の僕はそんなに服装にこだわるタイプではないし、あまり手を出さない価格帯でもあったんですが、着心地もシルエットも大満足!職人のこだわりが詰まったシャツを着こなす喜びに目覚めたことで、身の回りの道具を手がける作り手にも目を向けるようになったんです。

しかも、その時の清水さんの接客も素敵だったんですよね。押し付けがましくないけれども、親しみやすさがあって職人へのリスペクトも伝わってくるんです。着こなしのアドバイスも、定番はもちろん、あえて外したスタイリングまで教えてくれる。写真の「カタリザーノ」のシャツの時は、「エリの特徴を生かして細いネクタイを合わせてスッキリ着てもいいですし、第一ボタンを開けて太いネクタイを締めても映えますよ」なんてね。それに、前に購入したアイテムを覚えていてくれて、それに合うセレクトも教えてくれます。料理で言えば、和の器にパスタを盛るとか、洋食器に和食を合わせるような、"遊び心"があるコーディネートですね。

僕はレシピを考える時に「この料理を作る人はどんな人で、どんな味が好きなのか?」といった背景をイメージするんです。このアプローチの仕方って、なんだか接客と似ていませんか?だから、清水さんの姿勢もすごく参考になる。全く違う業界ですが、そういう所も勉強になっています。

そうそう、pannaが加盟している「BAYBROOK」グループの話になりますが、あえて都心に出店せずに九州に拠点を置いているポリシーも大好きなんです。今では東京や大阪からもお客さんがわざわざ訪ねてくるんですって。僕もその一人ですね。

衣装:TIGRE BROCANTE/スタイリスト:spiral sense

福岡市天神から歩いて10分。アパレルや古着店、雑貨店など多彩なテイストの路面店が軒を連ねる大名では、幅広い年代のファッショニスタが往来しています。その一角にあるpannaは、「きれい目の大人カジュアル」をコンセプトに、ドレスカジュアルからラフなアイテムまで幅広く揃えているセレクトショップ。扱うブランドの9割は海外、メインはイタリアだそうです。そういえば、コウさんのシャツもイタリア製でした。
「コウさんは長身でスタイルがいいので、国内ブランドだとサイズ感が合わないものが多いんです。なので、袖感やウエストのバランスが合いそうなイタリアのメーカーをお勧めしました。特に写真の「カタリザーノ」は、ナポリにある老舗のシャツ工房が手がけるブランド。エリ高が程よくあるので、ネクタイも映えますし、ノーネクタイでもカジュアルになりすぎないのが特徴。お店に来られた時はカジュアルなスタイルでしたが、ジャケットを合わせたキレイ目な着こなしもお好きのようでしたので、ドレッシーにもラフにも着こなせるこの一枚をお勧めしました」
入ってきた時の印象や以前に買ったアイテムをヒントにコーディネートを提案する清水さん。コウさんは、その接客術にも感動したそうですが、心がけていることはあるのでしょうか?
「そうですね。基本的にお客さまとはお互いに言い合える関係になりたいと思っています。コーディネートも、ちょっと違うと思った時はきちんとお伝えしますし、お客さまの考えも聞きながら、作り上げていきたい。あとは、説明も堅苦しくならないように、こんな所に隠しボタンがあるとか、裏地のステッチが変わっているとか、ちょっとした"遊び心"をお伝えする方がBAYBROOKらしいかなと」

そう、"遊び心"もBAYBROOKファンにとっては欠かせないキーワード。30店舗以上ある系列店では、各店の店長がバイヤーを兼ねていて、仕入れから商品構成まで任されているそうです。同じ品揃えの店が二つと無いのもユニークです。
清水さん曰く「僕も含めて皆、服が好きなんです。僕がセレクトする基準も、まず自分が着たいと思うかどうか。第一印象でビビっときたものは、説明を聞くとまず間違いなく好きになります。だからこそ、お客さまにも伝えることができるんです。それに、お客さまもファッションが好きな方ばかり。そんな人々に選んでもらえるのが嬉しいですね」

お客さまには感謝の気持ちも込めて、空間づくりやブログでの商品紹介などに力を入れているそうです。「仕事の合間やちょっとした空き時間に来てくださる方も多いので、リラックスできるように心がけています。ブログも地元ネタを挟んだり、マニアックなブランドを扱ったり。飽きがこないよう新しい取り組みにもどんどん挑戦したいです」
ファッション感度が高い大名の中でも多くのファンを持つpanna。訪れた人は、センスの高さに驚きながらも、いつの間にかのんびりとショッピングを満喫しているはず。上質なスタイリングに隠された遊び心とファッションマニアならではの心遣いが長く付き合えるコツなんですね。

panna(パンナ)

住所:福岡県福岡市中央区大名2-2-1 MIKIビル 1F
電話:092-716-2302
営業時間:11:00〜20:00
休み:1月1日
HP:http://pannabaybrook.blog19.fc2.com/

※panna大名店と博多店の正月初売り(2020年1/2〜)には、写真で紹介したブランド「カタリザーノ」の別注シャツが登場予定!
白無地とチェックの2種類で数量限定なので、気になる人はお早めに。