2020.06.26
「日本でいちばん大切にしたい会社」に選ばれた会社が、大切にしていること
人を大切にし、人の幸せを実現する取り組みを継続的に実践しながら、業績も伸ばしている会社。そんな、全国・地域に誇るべき会社を表彰する「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の第10回において、西部ガスが都市ガス界で初となる審査委員会特別賞を授賞しました。転職や離職率の低さ、障がい者雇用率の高さ、特例子会社の設立など、これまでのさまざまな取り組みの結果が評価に繋がりましたが、その根本には、「人の幸せ」に重きを置くという企業姿勢があります。授賞にあたり、人事という側面から大きな功績を果たされてきた、髙山健司さんと向井信也さんに詳しくお話を伺いました。
企業は人なり。働くことを幸せに思える環境づくり
2015年から5年間に渡って、人事労政部長を務めてこられた取締役 髙山健司さん。現在は取締役として経営に携わる立場で、改めて企業における「人」の大切さを実感していると言います。
「昔から言われていることですが、企業は人なりです。人材こそが最大の財産であり、企業は人によって形作られ価値を生み出す。そして、人を活かすためのよい仕組みを整えるのが、バックオフィスとしての人事の役割だと思います」
髙山さんの理想は「働くこと=幸せ」というエンゲージメントを生み出すこと。各人がこの会社で働く意味や、貢献しているという実感を得られるような環境づくりを目指して、さまざまな改革を行ってきました。
「僕が人事に就いた頃、会社は大きな変革期を迎えていました。人口減や少子高齢化の加速、電力やガスの自由化、かつ社員が減ってきている(漸減)時期でもあったんです。しかし、そういった事業環境をリスクではなくチャンスとして捉え、新しい事に果敢に取り組もうという会社の前向きな姿勢が、後押しをしてくれたんです」
中期経営計画を掲げ、10年後に到達する目標を据えてさまざまな施策を打っていく。しっかりと先を見据えた戦略で、企業価値の向上のための土台構築をしていこうと、会社が一丸となって動き出した時でした。
働く意識と環境を改善し、個々の活躍の場を広げる
髙山さんは、中期経営計画のひとつとして「三位一体改革」なるものを掲げます。
「人が関わることにおいては特に、時間をかけて意識改革や環境づくりをする必要があります。ダイバーシティ(※1)&インクルージョン(※2)、働き方改革、健康経営。この3つを三位一体として捉え、じっくりと改善を図ることにしました」
まず着手したのは、ベテラン社員と女性社員のさらなる戦力化です。
一般的に、定年が近づくと居場所を失いがちと言われるベテラン社員。しかし、その豊かな経験や知識は会社にとっての財産でもあります。そこで、本人とマネージャーの両方に「キャリアデザイン研修」を受けてもらい、その後面談をすることで、職場での自分の役割を再確認してもらえるようになりました。「会社に期待されていることが分かって嬉しかった」という声をベテラン社員から聞いた時は、髙山さんも思わず、うるっときたそうです。
女性においては、すでにスタートしていた「女性活躍推進計画」を推進します。女性社員の割合は12~13%と低く、活躍の幅も限られていましたが、ワークショップを通じて女性の意識改革を進めながら、周囲の社員にもセミナーで多様性の意識を学んでもらうことに。それを続けた結果、女性の職域は大きく広がり、離職率の低下にも繋がったといいます。
「出産や育児を経て、戻ってくる場所、活躍できる場所があるという理解も進みました」。その結果、2020年には、仕事と育児の両立支援における優良企業として厚生労働大臣より「くるみん(※3)」の認定を受けるまでに。目覚ましい変化を遂げることとなったのです。
※1 国籍、性別、年齢、宗教、ライフスタイルなどに固執することなく多様な人材を受け入れることによって、企業の競争力を高める取り組み
※2 従業員一人ひとりの違いを価値あるものとして高く評価し、組織全体で包み込むように迎え入れ、個々の能力やスキル、経験、強みを最大限に活かすことのできる環境を提供すること
※3 次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業に「子育てサポート企業」として与えられる、厚生労働大臣の認定(くるみん認定)
社員の笑顔や喜びの声がエネルギーとなり、髙山さんの勢いはさらに加速。2017年には「イクボス宣言」を発動します。「イクボス」とは、スタッフが持てる能力を最大限に発揮できるように全力で支援する素敵な上司のこと。そんなイクボス育成の試みが始まりました。
「上司であるマネージャーには毎年、業務目標と別に宣言を立ててもらいます。それを評価するのはスタッフたちで、得点が高かったマネージャーは社長から直々に表彰を受けることができます。宣言の中身は、『仕事を効率化し、時間外業務を2割削減します』とか、『なんでもみなさんの相談に真摯に乗ります』とか多種多様ですが、言ったからにはなんでも努力しなければいけないという(笑)」
相乗的に社内にはコミュニケーションが生まれ、風通しが良くなると共に、アワードに輝いたマネージャーのモチベーションも高まりました。実にさまざまな手法で社員の幸せに向き合う髙山さんもまた、「イクボス」の1人であることは間違いありません。
「自分ごと」とが「会社ごと」に。そして社会を変えるきっかけに
今回の授賞理由のひとつとして大きく挙げられたのが、特例子会社の存在。西部ガス絆結(ばんゆう)株式会社は、全国でも珍しい、福祉事業の就労支援と一般事業の働く場所の機能を併せ持った、新しい障がい者雇用のモデル企業です。
向井信也さんは、2016年「絆結」が西部ガスの特例子会社となる際、特命を受けて人事労政部に配属されました。2018年7月の定年退職以後も専任嘱託として、障がい者雇用関連を担当しています。実は、向井さんがこの職務に抜擢された背景には、ご自身のライフワークが関わっていました。
10年以上前から、北九州市の「特定非営利活動法人nest」の理事として、作業所やグループホーム、レストラン「木町家」の運営などに長く携わってきた向井さん。現在は福岡市でも、任意団体「まぜこぜむら」の理事として、障がい者や高齢者、健常者、若者がみんな一緒に自立して暮らしていける場所を作る活動にいそしんでいます。
「私の子供が障がいを持っていることもあり、プライベートで支援活動を行ってきました。それを長年見守っていてくれたのが、当時の人事労政部門の上司で、『西部ガス絆結』設立にあたり声をかけてくれたんです。すごく嬉しかったですね」 個人として培ってきた経験を、会社が価値として評価し、互いに認め支えあう。1人1人の生き方を大切にする企業だからこそ、できることかもしれません。
「働き甲斐はもちろんあります。自分の夢や活動が、会社にも役に立ち、ひいては社会を変えていくことになる。日本には何らかの障がいを持った人が人口の10%程度いると言われていますが、企業がその方々を積極的に雇用し、活用していくと、人材不足も解消されるはずです」
向井さんが目指すのは、「当たり前」という意識。障がい者と一緒に仕事をすることを当たり前として受け入れ、お互い共感しながら成長していけばいいと考えます。 「そのためには、雇用を促進するダイバーシティだけでなく、活躍の場を作るインクルージョンも同時に進める必要があります。人はみんなが個性や特性、能力を持っているもの。それを踏まえて、人材の適正配置ができるようになること。それがインクルージョンの最終的な到達地点かなと思います」
「西部ガス絆結」がもたらす波及効果
「当たり前」の意識は、「西部ガス絆結」の存在によって西部ガス社内にも少しずつ浸透してきました。業務の発注や打ち合わせ、商談などで、実際に障がいを持つ人たちと接する機会が得られたからです。
「接することで違和感がなくなってきたと共に、こう話したら伝わりやすいといったコミュケーション手法の勉強にもなっているようです。相手が理解しやすいように説明するという配慮や優しさが身について、社外のお客様と接する際にも役立っているという声を聞きますね」
自立した企業として存在し、障がい者雇用を促進するだけでなく、社員にもいい影響をもたらす「西部ガス絆結」モデルは、社外からも注目を集め、多くの他社さまから相談を受けアドバイスも行っています。
「ダイバーシティとインクルージョンに先進的に取り組む企業として、M&Aで特例子会社を設立した企業は西部ガスが初めてと思われます。次はこのモデルの素晴らしさを社会に伝え、より多くの企業に取り入れてもらい、拡がっていくことが、私たちの願いです」
地域に愛され、選ばれるグループ企業へ
西部ガスは今年90周年を迎え、記念すべき100周年まであと10年。今後も時代の潮流と社会の変化に柔軟かつ迅速に対応しながら、新しい取り組みに果敢に挑戦していきます。
2021年4月には、新たにグループ全体の経営管理に特化した「西部ガスホールディングス(HD)」(仮称)を設立予定。新体制でグループ全体の企業価値向上を図り、「エネルギーとくらしの総合サービス企業グループ」としてさらなる飛躍を図ります。
「西部ガスの経営理念は「地域貢献」「責任」「和」です。ホールディングス化後もそれは変わらないですし、グループ各社にも大事にしていただきたいと思っています。同じベクトルを向いて、『地域になくてはならない会社、地域で大切にされるホールディングス』を目指す。お客様の信頼を得て、選ばれる会社になるために、グループ全体一丸となって努力していきたいです」と、髙山さん。
人を大切にする会社とは、社員だけでなく仕事のパートナーや顧客、地域社会をも大切にする会社のこと。そうして生まれた幸せを多くの人と共有し、社会にも役立てていく。西部ガスがこれからも、人の暮らしや生き方に寄り添った「大切にしたい」会社であり続けることを願っています。
西部ガス株式会社
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