栄養もおいしさも。人を元気にする食の力に魅せられた管理栄養士

2020.07.16

栄養もおいしさも。人を元気にする食の力に魅せられた管理栄養士

食を通じた健康づくりの大切さが改めて見直される中、西部ガスグループの一員として「安心・安全でおいしい食事」というテーマに真摯に向き合うドクターフーヅ株式会社。約30年に渡って培ったノウハウを生かしながら、病院やクリニック、老健施設、デイサービスなどへ「喜ばれる」給食を提供し続けています。その裏側には、食事を手掛けるスタッフがチーム一丸となって努力を重ねる姿がありました。管理栄養士・調理師、両方の側面からチームを先導する満屋香織さんにお話しを伺います。

母親業と両立しながら、ドクターフーヅで院内給食、新規プロジェクトを担当する満屋さん

「食べることが大好き」から始まった栄養士への道

ドクターフーヅに入社して今年3年目を迎える満屋さんですが、ご自身の食のキャリアは長く、これまでさまざまな立場から食事と向き合ってきました。

お菓子作りの好きな母親に育てられたこともあり、小さい頃からおいしいものが大好き。「高校時代は昼休みになると学食へダッシュするようなタイプで、食べることへの欲求と探求心が人一倍でした」と笑う満屋さん。そんな娘を見て「だったら、栄養士になれば」と食の世界へ進むきっかけを与えてくれたのも母親でした。

管理栄養士を目指して中村学園大学へ進学。自分だけでなく、多くの人の健康を食事の面から支えることを学んでいきます。そんな中、ドクターでもある先生からの言葉が満屋さんの胸を打ちました。
「医者は薬によって病気を治療しますが、栄養士は食べもので病気の人を快方に向かわせることも、健康な人をさらに健康にすることもできます」。

人のからだは食べ物によって作られている。だから食事で人を元気にすることもできる。今まで意識していなかった「当たり前」のことに気づかされ、志は一気に高まります。病床の人を支える臨床栄養士に関心を持ち、栄養学に定評がある徳島大学医学部の大学院へ進むことを決意しました。

一食の重みを実感。食べることは喜びを生む

大学には病院が隣接しており、実際に病棟で患者さんと接する機会も多くあります。生きるか死ぬかという状況に直面する患者さんも多い中、食べ物と人との関わりがいかに深いものであるかを実感することに。

「絶食状態だった患者さんが、口から重湯を食べただけで、『米を食べると元気がでるわい!』と院内を散歩するまでに。重湯そのものは栄養価が高いわけではないのですが、口から食べたご飯にはそれ以上のパワーと価値があるんだと驚きました」。

食べることは、生きていくことなんだと痛感した満屋さん。大学院卒業後は岡山大学病院に勤務し、引き続き管理栄養士として臨床の仕事に携わります。一食一食に想いをこめて提供したいと尽力しますが、同時に、あるジレンマが生まれました。献立を考える栄養士と実際に食事をつくる調理師との間の見えない壁。互いの領域がはっきりしていて、うまく患者さんのリクエストに応えられない事があったのです。

「管理栄養士は料理ができないという先入観があり、調理師からすると、作り手の苦労なんて分からないだろうという意識もあったと思います。だったら私が調理師の立場に立ってみるしかない。いつかその両方を担い、パイプ役になりたいと思いました」

何事もまずは自分でやってみる、がモットーの満屋さん

調理師免許取得に向けて、一念発起

一方プライベートでは、大きな変化が訪れます。臨床を離れて地元・福岡に戻り、中村学園大学で恩師の助手として勤務。間もなく結婚し長男を出産しますが、シングルマザーとなり、調理師免許を取るという夢を抱えたまま再び管理栄養士として働くことになりました。「この頃は目の前のことで精一杯。大変でしたが、苦境を乗り越えたことが今は自信につながっています」。

子どもが4才になり、30代半ばという自分自身の年齢を考えた時、「今が最後のチャンスかもしれない」と一念発起。調理師の受験資格に必要な2年間の実務を得るため、小さな診療所で調理員としての勤務をスタートします。

「ある日、私がつくった料理を食べてくれた患者さんが、『お皿まで舐めたいくらいおいしい』と言ってくださったんです。本当に嬉しかったですし、つくることの喜び、そして苦労もよくわかりました」

想いを共有できる職場との出逢い

2年間の調理実務を終えて新天地を探していた時、恩師が勧めてくれたのがドクターフーヅ。安心・安全でおいしい食事を届ける。同社のコンセプトは満屋さんの想いと同じ。入社して1年目には、会社の支援もあり、念願の調理師免許も取得しました。

業務内容は多岐に渡りますが、特に注力しているのは、厨房の現場が円滑に回るようサポートをすること。複雑な調理工程を効率よく進めるためのアドバイスを行ったり、低温調理など新しい調理法のアイデアを出したり、自ら現場に立ってスタッフと一緒に課題に向き合います。

「口を出すだけじゃ賛同は得られない。みんなの気持ちを動かすには、同じ立場になって働いてみることが大切だと実感しています。管理栄養士と調理師の両方の資格を持てたことは、自分の中の自信につながり、とても役立っています」

施設で新しいメニューを試食してもらった際、普段は食の細い方が「これならもっと食べられる。おいしい」と笑顔を見せてくれることが、なにより嬉しい。食事で人を元気にしたいという、長年の想いが実を結んだことを実感できる瞬間です。

勉強会や研修にも積極的に参加して、知識やアイデアをストックする

心も体も健やかに。通いたくなる地域の食卓が誕生

「会社の仲間は年代もバラバラですが、互いに得意不得意を補いながらいいチームワークで働いています。現在は、新規プロジェクトとして福岡市博多区千代にオープン予定の、食堂の準備に奮闘しているところです」。

ドクターフーヅの親会社である西部ガスが、社員の「健康経営」宣言をきっかけとして開設を決めた社員食堂「火と人」。バランスの取れた栄養価で、かつおいしい食事を提供する「健康な食の発信基地」を目指しており、ドクターフーヅは栄養管理のみならず、実際に運営を行う立場としてプロジェクトに携わっているのだそう。
※社員食堂ですが、一般のお客さまもご利用いただけます。

地域に根差し、誰もが利用できる親しみやすい食堂は、毎日でも通いたくなる工夫に溢れています。管理栄養士が常駐し、おいしくて身体にもいいメニューを提案。フレッシュなフルーツやヨーグルトなど、美容を気遣う女性にもおすすめの食材が並ぶほか、選んだ料理のカロリーを自動レジがトータルで表示してくれる(9月下旬頃の導入を目指しています。)など嬉しいサポートもあります。また、「健康食堂」というコンセプトに相応しいものにするために、健康づくりに役⽴つ栄養バランスのとれた⾷事である「スマートミール」の認証を目指しています。
(ご参考)スマートミールとは?http://smartmeal.jp/smartmealkijun.html

さらに料理の全体監修を務めるのは、人気を博したテレビ番組「料理の鉄人」にも出演した経験のある、「フランス料理KOJIMA」のオーナーシェフである「小島孔典氏」。九州を代表するフランス料理の第一人者の監修とあれば、これは期待せずにいられません。

天井の高い開放的な空間は、地下にいることを感じさせない広々としたスペースになっています。ランチタイムを除いた時間は、奥のスペースを西部ガスグループ社員向けのコワーキングスペースとしても活用され、食と深い関わりを持つ西部ガスならではのイベントや西部ガスグループ社員向けのワークショップも随時開催予定。また、店内はフリーWifiが設置されており、一般のお客さまも手前のカフェスペースでおくつろぎ頂けます。さまざまな楽しみ方ができる地域の憩いの場として、健やかな心と体を育みながら、多くの笑顔を生み出していきそうです。

地下であることを感じさせない、居心地のよい明るい空間に

「自分の家族に食べさせたい料理」を多くの人へ

「ドクターフーヅでの私の役割は、決められた道を走っていくのではなく、ゴールに向かって新しい道を切り開いていく感じ。不安がないとは言えませんが、それ以上にいつもワクワクしていますし、周囲からたくさんのサポートをいただきながら、今後も前に前に進んでいきたいです」。

そんな満屋さんの大きな心の支えとなっているのが、小学生に成長した息子の存在。「最近、お母さん楽しそうだね、ってよく言われるんです。大好きな食にまつわる仕事ができて、こんなに幸せなことはないと感じているので、つい表情に出ているんでしょうね」。

食事を提供する上での大きなテーマは「家族に食べさせたい料理」であること。大切な人が安心して口にでき、喜ぶ顔を見せてくれる。そんな食事を広く届けていきたい。一食一食に込められた想いはきっと、これからもたくさんの人の元気を支えてくれるはずです。