2020.09.17
"ととのい"で心と身体を解き放つ
ディープに楽しむ最新サウナ術
皆さんは「ととのう」体験を味わったことはありますか?
整理整頓の「整う」ではありません。最近巷で、いやサウナ界隈で飛び交う方の「ととのう」です。サウナの魅力にとりつかれた"サウナー"の皆さんによると「ととのったことがないなんて、人生もったいない!」と言われるほど至福の体験なのだとか。
昨年にはサウナーを主人公にしたドラマ「サ道」も放映され、新たなサウナブームの波が巻き起こっているようです。なんと、温浴施設だけではなく、テントサウナなど自宅やアウトドアで楽しむ人が増えているそうですよ。
そこで今回は、全国各地のサウナを巡り、九州のサウナカルチャーを紹介するWEBマガジン「九州とサウナ」を立ち上げた金沢昂紀さんにその楽しみ方についてお聞きしました。
金沢さんはサウナ好きが興じて、市内にプライベートのサウナアジトを構えているほか、テントサウナでイベントなども催されているそう。後半ではテントサウナの醍醐味についても教えていただきました。
ガマンしなくても気持ちいい! 極上の愉悦が待つサウナ術とは
サウナといえば「熱さに耐える」というイメージを持つ人も多いのですが、現在ブームの発端となっているのが「フィンランド式サウナ」なんですって。このサウナを取り入れる施設が増えたことやアウトドアで体験できる「テントサウナ(モバイルサウナ)」の流通も要因と言われています。
「もともと日本でのサウナの歴史は、1964年の東京五輪の際に持ち込まれたという一説などがあります。でも、当時日本で誕生したサウナは高温乾燥の「乾式サウナ」だったんです。乾燥していることで息苦しさを感じるため「サウナ=我慢」といった構図が生まれたそう。 それに対して、サウナ発祥の国フィンランドでは、高温多湿のサウナが主流。湿度が高い為、乾式サウナに比べて息苦しさを感じず、身体の内側からジワジワと大量の汗をかけるのも魅力です。」
社会人になってから日々の癒しを求めてサウナに通うようになったこと、テントサウナやイベントで全国のサウナーの皆さんと出会ったことから、どんどんのめり込んだという金沢さん。自分にとってのベストなサウナの入り方、コンディションの作り方を常に研究しているそうです。
「サウナ自体は自律神経を整えて免疫を高めてくれるので、風邪を引きにくくなるとか、健康・美容に効果的であるとも言われていますね。実際、僕も自律神経が乱れて突発性難聴になった時に、毎日サウナに入って立て直したことがあります。カラダも頭もスッキリとリセットされる感覚となるので、仕事や生活のパフォーマンスを高めるために、"朝サウナ(通称:朝ウナ)"に入ることも度々です。サウナ好きの人がよく"ととのう"という言葉を使うでしょう?」
この「ととのう」体験も金沢さんがハマった要因の一つだそうです。
「① サウナでしっかり身体を温める。②キンキンの水風呂に入る。③外気浴でゆっくりと休憩する。①〜③をセットで繰り返すことで、外気浴中に身体の表面がジンワリと痺れるような感覚になり、脳内の隅々まで酸素が行き渡る"ディープリラックス状態"が訪れます。その後は、身も心もシャキッと引き締まるんです。"サウナトランス状態"と言うのかな。中には「宇宙との交信」と表現する人や、水風呂を「母の胎内」と形容する人もいらっしゃいます(笑)」
なるほど!そのコツをぜひ教えてください!
サウナ→水風呂→休憩のセットで、レッツ"ととのい"
「サウナ室で身体を十分に温めて、水風呂で一気に冷やす、その後休憩すると言うのがワンセットなんです。サウナは好きだけど、冷たい水風呂が苦手と言う人も多いかと思います。でも、これがないとサウナとは言えないんですよ!」
金沢さん流"ととのう"サウナ入浴法 其の壱【サウナ室】
「まず、洗体・洗髪を済ませた後、身体を拭きましょう。体が濡れたままサウナに入ると水分がサウナ室の熱で蒸発し、その時の気化熱で体が冷えるんですよ。温度が低く汗をかきづらいサウナの場合は、入室前に軽く湿らせたタオルで身体を拭くと発汗が促進されますよ。」
入ってからしばらくすると、熱気に包まれてジワジワと汗が吹き出します。
身体の中では交感神経が活発になり、脈拍も早く、息苦しくなることも。
「汗をかいて息苦しくなってきて、"もう限界の一歩前"くらいが出る目安です。施設のサウナ室の設定にもよりますが、僕の場合は大体10分強を目安に入ることが多いですね」
サウナによっては、フィンランド式の「ロウリュ」を取り入れているところも。
「サウナストーブで温めたストーンにアロマ水をかけることで発生した蒸気を"ロウリュ"と言います。その蒸気によって、体感温度がグッと上がるんですよね。さらに、施設によっては"熱波師"と呼ばれるスタッフがいて、ロウリュをバスタオルやうちわで攪拌し、一人ずつに扇いで熱風を送る"ロウリュサービス"をやっているところも。これは、バスタオルで熱風を送る"アウフグース"というドイツの習慣に由来しているのですが、熱風が肌にダイレクトにあたるので、汗が一気に吹き出します。そうなると体感温度がかなり上がるので、限界が来た時は無理をせず退出しましょう」
ちなみに、自分でロウリュをする時は同室のお客さんに一声かける、退出する際には座っていた場所をタオルで拭くのもサウナーのたしなみなんですって。
其の弐【水風呂】
「個人の好みもありますが、水風呂で一番心地いい温度が16℃くらいと言われています。入浴施設は大体18℃前後で設定されているところが多いですね。シングルと呼ばれる10℃以下を好む人もいます。最近ではシングルから38℃くらいまでの水風呂がいくつか用意されていて、好みに応じて選べる施設もあるんですよ」
水風呂に入るのは、慣れるまでちょっと勇気が必要ですが、まずは掛け水やシャワーで全身の汗を洗い流しながら身体を慣れさせましょう。
「まず心臓に遠いところから、手と足、背面、顔から全体に掛水をします。あとは何も考えずに浴槽にスッと入るのがポイント!最初はもちろんひやっとしますが、5秒くらい我慢すると体の表面に熱が集まって冷たさを感じなくなるんですよ。その状態を"温度の羽衣"や"天使の羽衣"って言うんです。本当に羽衣をまとったみたいに冷たさが調和されるんですが、そうなったら"勝ち"ですね(笑)。
あとは体も気持ち良くなってきますので、お好みのタイミングで出ましょう。僕の感覚としては、深呼吸して息が冷たくなった時を出る目安にしています。大体1分前後くらいですかね」
其の参【休憩】
サウナ、水風呂の温冷交代浴により交感神経と副交感神経がスイッチングした後、外気浴での休憩中に体は少しずつ平常状態に落ち着いてきます。このタイミングに"ととのい"が訪れるそうです。
人によって"ととのい"の感じ方はさまざまですが、軽いめまいのようになる人もいるよう。ここでしっかりと休憩を取るのが大事なんですって。
通常は、サウナ室→水風呂→休憩のローテーションを2、3セットこなすという金沢さん。「仕事終わりで寝るだけって時はしっかり3セットやってリラックスします。逆に朝スッキリしたい時は1セットにして身体をシャキッと目覚めさせますし、半日滞在して昼に1回、15時くらいに1回、夜に1回、その合間に仕事なんてことも。仕事前なら、水風呂を長め、休憩を短めにして、頭をスッキリさせるなど使い分けをしています。身体と相談しながら、自分なりのサウナの入り方とペースをつかんでみましょう」
また、サウナをもっと快適に楽しむコツも伝授いただきました。
<静けさに浸る>
「サウナだとスマホが扱えないので自然とデジタル環境からシャットダウンされた状態になります。僕は個人的に室内にテレビがない施設が好みです。情報が入らないことで頭の中の悩みやもやもやをリセットできるんです。年始にバンコクに行った時、お寺にサウナがあり僧侶が身を清めるために入っていました。サウナで身を清め、更には瞑想をすることで修行の効果をより一層高めるそうです」
確かに、自分の身体と向き合わざるを得ないサウナ室では、いつもより心の声に耳を傾けることができそうですね。その中で考えがまとまったり、アイデアが降りてくることもしばしばだとか。
<マナーを伝える場としてのサウナ>
「フィンランドの子ども達は、は公衆サウナでマナーを覚えるという話も聞いたことがあります。サウナの中で大声をあげないとか、ロウリュのタイミングは周りの人に気を使うとか、座っていた場所を拭いてから出るとか。現在ブームとなっているテントサウナも同様ですね。マナーがしっかりできている人は"サウナ紳士"なんて呼ばれています」
コロナ後は、適度に距離を取る、会話は控えるなどのマナーも浸透しているようです。公衆の場という意識を持って、紳士を目指してみては?
<サウナ飯を楽しむ>
「サウナに入る前の食事は基本的に禁物です。血液が消化に回ってしまう為か、個人的には満腹後のサウナはととのいづらくなる気がします。でも、サウナの後に食べる"サウナ飯"は至福の時間なんです。三度の飯よりサウナ飯ですよ。
サウナの後って、体内から塩分が出ているし、五感が研ぎ澄まされているからなのか、食事がすごく美味しくなる。行く前に施設や周辺の飲食店をリサーチするのも楽しみなんです」
食事はできる限りサウナ後に取る方が良いのですが、サウナでは大量に汗をかくので、合間に適度な水分補給をお忘れなく。
<サウナ旅で各地を巡る>
「サウナーはサウナ目当てで旅行するんですよ。東京にはさまざまなサウナが点在していますし、「西の聖地」と呼ばれる熊本市の「湯らっくす」も有名ですね。地方には他にもおもしろいサウナが多い。佐賀県有田町にある「ヌルヌル有田温泉」は水風呂もぬるぬるで個性的。あと、私の地元、筑紫野市にある「天拝の郷」は福岡でも数少ないセルフロウリュができる施設でオススメです。それに、2019年12月に福岡市にオープンした「ヒナタの杜」のロウリュサービスもユニーク。大きなうちわであおいでくれるパワータイプのロウリュで、体感温度がものすごいです!お気に入りのサウナ"ホームサウナ"を見つけることも"サ活(サウナ活動)"の楽しみの一つなんですよ。」
アウトドアの開放感を満喫する “テントサウナ”の魅力
金沢さんは好きな時にいつでも利用したい、さまざまなロケーションで楽しみたいと、テントサウナを購入したそう。テントサウナとは、文字通りテントの中で楽しむ移動式サウナです。テントの中には薪ストーブとストーンが設置され、ロウリュもできます。水風呂は、なんと川や海など自然の水場を利用するそうです。
「スポットを決めたら、水場の透明度や深さなどを必ず調べておきます。海は冬でも意外と温かいし、逆に川は一年中冷たくて、冬は10秒入っていられないくらい。キュッとしめられる感覚がまたいいんですよ。水場がない場合は、ビニールプールを持って行きます。大自然の中で風に心地よく吹かれるとととのいやすいし、壮大な景色の中というのがぜいたくですよね」
最近はテントサウナを楽しむ人も多く、施設でルールを決めているところも。キャンプ場などでのルールや近隣住民、環境への配慮を忘れずに、事前の利用許可なども確認しておきましょう。
地元のサウナ施設や環境資源の魅力など、九州のサウナカルチャーが盛り上がっていくことを願って、Webマガジンまで立ち上げてしまった金沢さん。
今後は「サウナ×禊」「サウナ×ヨガ」など、地域の魅力を知ってもらう為の様々なイベントも企画中だとか。
「サウナというコンテンツを通して、各地域の資源の掘り起こしや町おこしにつながるような『サウナツーリズム』に取り組みたいんです。心もカラダもホッとできるつながりの輪が九州で広がっていけばいいなと思っています」
金沢さんのサウナメソッドが詰まった屋上サウナも気になるところですが、まずは最新のサウナで“ととのう”体験を味わってみませんか?
2019年12月にオープンした「ヒナタの杜」へ足を運んでみましょう!
サウナーのツボを付くサービスが満載 福岡のニューフェイスに注目!
西部ガスグループでは初めてとなる温浴施設「ヒナタの杜」は「自然の温もりが感じられる第二の我が家」をコンセプトに、高濃度炭酸泉や、ジェット付きの寝湯、木々に囲まれた開放的な露天風呂、ガス暖炉と床暖房でポカポカと温かい「温暖ルーム」、岩盤浴などを備えています。木のぬくもりとグリーンに心いやされるサウナでは、男性にはスタッフによるロウリュサービスを、女性にはオートロウリュのサービスが登場。サウナーにも評判の水風呂は、なんと露天風呂!。まるで森の中にいるような清々しさもお楽しみの一つです。休憩後の「サウナ飯」なら、福岡で人気のONOグループが手掛けるDiners ONOへ。料理長が腕を振るうメインデッシュと小皿に盛られた様々な料理やパティシエが作るスイーツが好きなだけいただけるKOKO盛りビュッフェのほか、デトックスウォーターなど、女子に好評のメニューもお見逃しなく。
まとめ
「百聞は一見に如かず」という言葉がありますが、この “ととのう”という体験はまさにそれ。一度味わうとヤミツキになってしまうこと間違いなしです。
以前のイメージを払拭して、老若男女さまざまな世代で楽しめるカルチャーとして進化を続けるサウナですが、これからどんな展開を見せてくれるのでしょうか。あなたもサウナの中で“ととのった”なら、スッキリクリアな頭で新しいアイデアを考えてみてはいかがでしょう。
ただし、くれぐれも無理は禁物!マイペースで楽しむことがサウナ活動“サ活”の極意ですよ。
金沢昂紀さん
サウナイベント情報はこちら
https://twitter.com/koking0404
九州のサウナカルチャーを紹介するWEBマガジン「九州とサウナ」はこちら
https://kyushusauna.com
ヒナタの杜 小戸の湯どころ
〒819-0001 福岡県福岡市西区小戸2-1-87
TEL:092-688-9269
営業時間:9:00〜24:00(最終入館時間 23:00)/無休 ※年に数回メンテナンスのため、休館日あり
HP:https://www.hinatanomori.jp
※この情報は9月17日現在のものです。状況によって営業時間や店休日などが変わる可能性もありますので、最新の情報はホームページやSNSで確認してください。