老舗と共に新たな

2020.12.25

老舗と共に新たな"食の連携"へ 適材適所で取り組むフランチャイズ事業への歩み

「今回のプロジェクトは、コロナの状況もあり、出店までは大変紆余曲折ありましたが、出店が決まってからは驚くほどスムーズでした」と、笑顔で答えてくれたのは西部ガス株式会社事業開発部の中山歩さん。
プロジェクトとは、西部ガスグループとして初めてのフランチャイズ事業で、北九州市黒崎に12/7オープンした焼肉ファストフード店「韓丼」のことです。
今回は西部ガス株式会社と中華料理の老舗「八仙閣」がタッグを組んで進めたと聞いています。しかも八仙閣としても初の試みとか。八仙閣営業推進部の尾田隆之さんもこのチームワークの良さに成功の予感を抱いたそうです。
ただでさえコロナ渦で飲食業界が逆風にさらされている時期に、初めて尽くしのプロジェクトがすんなりと進むものでしょうか?
「韓丼」の店長を務める實松裕次さんも交えて、"挑戦者たち"と呼ぶには和やかすぎる現場で詳しくお話を聞きました。

左から:西部ガス株式会社事業開発部の中山歩さん、韓丼黒崎店店長の實松裕次さん、八仙閣営業推進部の尾田隆之さん

同じタイミングで持ち上がった「フランチャイズ」という選択肢

「フランチャイズ」とは、親会社と加盟店が契約を結び、加盟店が親会社にロイヤリティを支払うことで商標の使用権やサービス、商品などの販売権を得られるビジネスモデル。大手のブランド力を利用して短期間で効率的に出店できるメリットがあります。西部ガスグループでも新規計画の一環として、約2年前からフランチャイズ事業への取り組みがスタートしました。
「フランチャイズと言ってもコンビニやクリーニングなどさまざまな業態がありますが、西部ガスらしく飲食でいこうと。グループ内で飲食店の運営といえば八仙閣さんですから、今回の参加をお願いしたんです」とは、中山さんの話。

実は、その頃にはすでに八仙閣側でも動いていたそうです。
「八仙閣としても、売り上げを伸ばすための施策の一つとしてフランチャイズ事業の案が出ていたんです。それで独自に情報を集めていたんですね。とはいえ、50年以上中華料理一筋でやってきたので、大きな決断でもあります。そんな時に、西部ガス社長就任のあいさつで"食の連携"について触れていらしたのを聞いて、我々も背中を押されたんです」と尾田さん。
フランチャイズという目標を掲げた二つの企業がシンクロした時に、今回のスムーズすぎる二人三脚はすでに約束されていたのかもしれません。

手作りとできたての味にこだわる韓丼と西部ガスグループの思いを一つに

ボコボコと湯気をたてる「スン豆腐」。海鮮や和牛すじ肉、ホルモンなど4種類から選べるほか、具材2倍などのオプションも嬉しい。辛さが苦手な人には「海鮮白スン豆腐」もあり

今回契約したのは九州ではまだあまりなじみの無い「韓丼」。韓国料理の研究家がプロデュースしたカルビ丼とスン豆腐の専門店です。その最大の魅力は、お店に一歩足を踏み入れるとわかります。オープンキッチンではスタッフがカルビを香ばしく焼き上げ、その隣のコンロではグツグツと煮えたぎったスン豆腐がずらり。全て"できたて"の味が楽しめるのです。
尾田さんが「韓丼に決めた一番の理由は"炎"ですね」と教えてくれましたが、なるほど、直火で調理する厨房の様子は西部ガスのイメージにぴったりです。
焼き場だけではありません。セントラルキッチンではフレッシュな野菜とフルーツからタレやスープを作り、カルビは提供前にスタッフが手で切っているそうです。
フランチャイズでありながら、手作りのおいしさにこだわるスタイル。これも西部ガスグループの"食"への思いに通じているようです。

自社開発のジェットオーブンでじっくり火を通したカルビは、提供直前に香ばしく焼き目を付けて仕上げる。韓丼本店店長の山内さんも「スタッフの焼き芸も商品のうち。ぜひオープンキッチンのライブ感を味わってください」と魅力を教えてくれた

看板商品の「カルビ丼」フルーツや野菜をたっぷり使った甘辛いタレをからめた牛カルビはご飯がどんどん進む。温玉やキムチのトッピングもあり

手作りナムルが入ってヘルシーで食べごたえもある「石焼きビビンバ」。お腹に余裕があれば、カルビを合わせた「カルビビビンバ」もおすすめ。

それぞれの特色を生かした着実な進行で企業としても新しい可能性を切り開く

週に3日は会っているという3人。韓丼の母体である「やる気」担当者も、「担当者が3名なので動きが早くて助かりました。西部ガスさんということで、我々も反響を期待しています」とのラブコールが寄せられている

フランチャイズの契約後、韓丼を運営する「やる気グループ」とのやり取りや全体の事業計画は中山さんが、店舗運営は八仙閣が担当したそうです。「私は今年の4月に西部ガス株式会社の事業開発部に異動して、これが最初の仕事だったんですよ。飲食業界のこともあまりよく知らず不安でしたが、八仙閣さんが店舗運営などを引き受けてくださったのでとても助かりました」と中山さん。
すぐに八仙閣の尾田さんが「いやいや、中山さんの采配が完璧でした」と返します。続けて「実は、八仙閣の店舗企画課もメンバーは私一人なんです(笑)。実際に店舗を切り盛りする役は、八仙閣の社員から選抜した實松にまかせています」

實松さんは、出店が決まってから京都にある韓丼本店で1ヶ月研修して腕を磨きました。「研修中はもう大変でした。もともと自分はホール側の人間で、ほとんど調理経験が無かったんです。韓丼はフランチャイズですが、料理は手作りでしょう。肉を切るのも焼くのも店舗でやるので、まず包丁の取り扱いから学びました」。特訓の成果もあり、尾田さんも「もう立派な料理長です」と太鼓判。オープン直前の試食会でも大好評でした。

さらに、八仙閣としてはもう一つの展開にも注目していました。「これまでの八仙閣はファミリー層がメインで、記念日などで利用されるようなお店でした。韓丼のように気軽に通えるファストフードの客層は欲しいところでもあったんです」と尾田さん。
實松店長も「お一人でも入りやすい店ですよね。ガッツリ食べたい方はカルビ丼、ヘルシーなものを求めるならスン豆腐と使い分けもできます。それにカルビ丼は390円のミニサイズもありますし、手ごろな値段設定も喜ばれるんじゃないでしょうか」と手応えを感じているそう。
西部ガスの中山さんも「フランチャイズだけに、八仙閣の通常営業とは異なるものも多いと思います。韓丼の良いところを学んで八仙閣にも生かすとか、そういうメリットがあれば出店した甲斐がありますね」と企業としての成長を期待していました。

時代に合わせた店作りを通して今までなかった食文化を九州に届けたい

スムーズな流れで進められた出店計画ですが、コロナの影響は本当に無かったのでしょうか。「オープンの延期や中止も可能性としてはあったのですが、韓丼はテイクアウトもしっかり力を入れているお店なので、緊急事態宣言後も比較的お客様の戻りが早かったんです。だから、黒崎店も現状でいけるんじゃないかと」基本的にスケジュール通りに進められたという中山さん。韓丼本店ではテイクアウトが売り上げの半数を占めているという報告から、黒崎店でもテイクアウトコーナーの場所作りに力を入れているそうです。
「こちらとしては、中山さんのリードのもとで納得いくまで準備が整えられたのが良かったですね。オープン後の運営は八仙閣がしっかりリードしないと。實松店長にもぜひ頑張ってもらいたいですね」と尾田さんがハッパをかければ、實松店長も深くうなずきます。「スタッフ研修など現場の仕事に集中できるよう体制を組んでもらっているのがありがたいですね。この黒崎店が西部ガスグループにとって1号店になるので、韓丼本店と同じ品質、いやそれ以上の味を出して必ず成功させたい。ゆくゆくは2号店、3号店につなげていきたいと考えています」

八仙閣のお二人の意気込みにつられて中山さんの言葉にもさらに熱がこもります。「韓丼の中でもナンバーワンを取りたいですよね。それは店長やスタッフの皆さんの頑張りによるところが大きいんですけど、僕も裏方で参加できたらと。それに、韓丼だけで終わらず、新しい食文化を九州のお客様に提供したいという狙いもあるんです。今後もどんどんフランチャイズ事業を伸ばしていきたいですね」
お互いの長所を発揮して、新たに飛び込んだフランチャイズ事業。西部ガスにも、八仙閣にとっても、グループ企業としての強みを改めて実感した現場だったと語ってくれました。オープンしてまだ間もないですが、三人の穏やかなまなざしはすでに次なるビジョンを見つめているようです。

韓丼 北九州黒崎店

〒806-0069 福岡県北九州市八幡西区茶売町1-3
TEL:093-482-5117
営業時間:11:00〜23:00(LO22:30)/年中無休
HP:http://kandon.jp