2021.06.25
デジタル化で働き方も改革を
「ROVATA」で西部ガスはどう変わる?
2021年9月に新たにデジタル庁が新設されるなど、国をあげてデジタル化が推進されている日本。業界を問わず、各企業がAIやビッグデータ活用などデジタル技術を活用した、これまでの常識に留まらない新たなビジネスモデルで、お客さまだけではなく、働く側にとっても大きな変革をもたらしています。
西部ガスグループでも2019年の中期経営計画の中で、「デジタル技術を活用してグループ全体の競争力を強める」という戦略を発表。
その達成のために、業務の効率化・高度化や新たなサービスの創出といった事業変革に加え、コロナ禍にも対応した働きやすい環境整備が急がれています。
そこで、今からちょうど1年前の2020年4月、グループのデジタル化を「攻め」の姿勢で推し進めるために「デジタル化推進部」が新設され、更に本年度、「守り」の部分である業務システムやPC関係のインフラ環境整備を行う部署を統合し、さらに、外部からの専門人財、他業種からの中途採用者など多彩なメンバーを加えて「デジタル戦略部」が新設されました。
本格的に動き出した西部ガスグループのデジタル化施策は、どんな変化をもたらし、その先にどんな未来を描いているのでしょうか?
デジタル戦略部の皆さんにお話を伺いました。
デジタル戦略部がリードする コロナ禍にマッチする取り組みとは
デジタル戦略部では、さまざまなプロジェクトを手がけていますが、コロナ禍の今、優先的に力を入れているのが、「お客さまとのリレーション強化」と「次世代ワークスタイルの実現」。簡単に言えば、次のような内容です。
「お客さまとのリレーション強化」
これまで、システムや事業で分かれていたお客さまの情報を、デジタル技術を活用することにより集約・活用することで、お客さま一人ひとりに対して、その時に必要とされる商品・サービスなどの有用な情報を一元的にご提供することが可能になります。このことでお客さまとのリレーションを強化し、引き続きサービスを継続いただけるように、また、新しいサービスを選んでいただけるようになります。
「次世代ワークスタイルの実現」
グループウェアや業務システムをクラウドベースで共有することで、場所や時間を問わず、快適に仕事ができるテレワーク環境を提供していきます。
この「次世代ワークスタイルの実現」の流れを受けて、今年の4月、西部ガス本社にコワーキングスペース「THE THIRD ROOM ROVATA」が登場しました。
コワーキングスペースと言えば、一般的に複数の企業や事業者が共有するオフィスを指しますが、こちらは西部ガスグループ内の社員が利用する企業型タイプ。デジタル戦略部の皆さんはオープン前からこのスペースを試験的に活用し、新たな働き方の検証にも挑戦をされているようです。
思いついたらすぐにミーティング 自由なスタイルがアイデアを呼ぶ
実際にパピヨン24ビルの1階にある「THE THIRD ROOM ROVATA」を見学させていただきました。ゆるやかなアーチを描く木造の天井のもと、木漏れ日のような優しい光に包まれた空間。モニターを前に一人で集中している人もいれば、ミーティングスペースでオンライン会議に参加するチームもいます。
なんだか業務中というよりも、大学のミーティングルームのようなフランクで自由な雰囲気です。
実は、この空間づくりにも、デジタル化への思いが込められています。
そもそも、デジタル化に関わる案件は、一つ一つが別々に進んでいるわけではありません。
例えば、お客さまが簡単に見積もりが取れるウェブシステムを導入すれば、営業が訪問する負担が減少。その分の時間でさらに別のお客さまに対応すれば生産性アップにつながります。結果的に働き方も変わってくるのです。
さまざまな案件がつながって新たな成果をもたらすデジタル化事業は、今までとは異なるフレキシブルで柔軟な姿勢が求められます。
ROVATAには、そんなワークスタイルを促す役割も担っているのだそうです。
立案を手がけたデジタル戦略部の佐藤時夫部長にその特徴を教えていただきました。
「この場所は、コワーキングの象徴的な部屋にしたいと思ったんです。そのため、まず考えたのは機能性。コワーキングスペースって、おしゃれなところはたくさんあっても使いやすいところはあまりないんです。動かしにくいソファがあったり、仕切りがなくて話し声が筒抜けだったりします。
だから、ROVATAではいすやデスク、仕切りなども可動式にして、ミーティングスペースをいくつか用意しました。天井や壁面、パーティションには防音やウイルス除去の加工も施しています」
随所に工夫が凝らされた空間ですが、一番の狙いは利用する側の意識を変えることにあると佐藤さんは考えています。
「去年はデジタル化推進部として、クラウド化のためのソフト関係を充実させました。会社でも自宅でも、場所を選ばず仕事ができるようになりました。今後は、その環境をもっと活用してもらうために社員への教育や啓蒙活動を進めていく必要がある。そこで、このROVATAを作ったんです。ここのミーティングスペースで研修ができるし、何より、全く新しい環境で働けるというインパクトを感じて欲しいんです」
確かに、周りを見回してみると、あるテーブルでは、デジタル戦略部の若手や営業をよく知るメンバー、現場変革に強いコンサルタントが集まってミーティングの真っ最中。ときおり隣で作業しているデータ分析の専門家に意見を聞くなど、かなり自由な流れで仕事が進んでいるようです。
デジタル戦略部の西田忠輔さんによると、このユニークなスタイルが仕事にも大きな影響をもたらしているとか。
「ROVATAは、小さなコミュニティがたくさんあるようなイメージなんですよ。社員だけじゃなく、デジタル化事業に関わるフリーランスのエンジニアや学生もいて、それぞれ年齢、性別、肩書きも異なる。いろんな角度から知識が集まってくるんですね。専門的な意見もすぐ聞けますし。仕事のスピードも早いんです」
デジタル戦略部2年目の森萌々子さんにとっても気軽なアイデアを出し合う場所となっているそうです。
「私は、少人数のグループミーティングやちょっとお話しする時にもよく利用しています。デジタル戦略部のある6階のオフィスよりも状況によって選べる場所のバリエーションが多くて、なんとなく話しやすいんです」
学生やフリーランスと協力して デジタル化は次のステップへ
テレワークの環境が整い、さまざまな人材と即興的につながることができるということは、日頃からプロに認めてもらえるようなアイデアを持っておかなければならないということでもあります。そんなプレッシャーが社員のレベルアップにもつながるのではないでしょうか。
改めて、森さんに仕事への思いを聞いてみました。
「この部に所属するまでは、デジタルなんて関わったこともなかったんですよ。機器の整備や社内アプリのセキュリティに関するグループなのですが、知らない単語が出るたびに調べたり、先輩やここにいる人にアドバイスをもらったり、イチから勉強しました。最初は大変でしたが、わからない人の気持ちが理解できるとプラスに考えて、説明も工夫しています。コロナ禍の影響もあって、社内の皆さんがデジタル化にどんどん前向きになっているので、自信を持って対応できるよう、もっとスキルアップしたいと思っています」
さらに、デジタル戦略部では学生に対する職業体験の場にも力を入れているそうです。それも就活の一環としてではなく、学生が自分のスキルを使って仕事をして、対価を得るというもの。学生に対してコロナ禍に就業の場を提供する社会貢献の意味に加え、会社は一部の成果に対してコストが抑えられ、学生さんはスキルを磨きながらアルバイトができます。
福岡工業大学4年生の久原尚輝さんは、そんな職業体験の一人。今はエンジニアの元でウェブサイトのレイアウトや商品登録などの業務に携わっています。
「僕はエンジニアとして働きたいと就職活動を続けていたんですけど、説明会で話を聞いても実際の業務内容ってピンとこないんです。デジタル戦略部ではプロのエンジニアの業務を経験できますし、社会人になる前の下準備みたいな気持ちで臨んでいます」
学生が身近にいることで、森さんや西田さん達社員にとってもいい刺激をもたらしているようです。
―森さん: 久原さんのような学生さんとか、社外の方の忌憚の無い意見は、うちの仕事にもいろんな変化をもたらすきっかけになるのではないでしょうか。
―西田さん: いろんな世代の考え方がわかるし、すごくいいですよね。働き方が進化することで仕事のスピードも上がって成果も出るし、いろんな人が関わるから一人で背負い込むこともない。そうなったら仕事がもっともっと楽しくなるはず。会社全体にも広げていけたら嬉しいですね。
デジタル化がスタートして1年。はっきりとした成果が現れるのはこれからですが、デジタル戦略部の皆さんにとってのゴールはどんなイメージなのでしょうか?
佐藤さんにお尋ねすると、こんな答えが返ってきました。
―佐藤さん: デジタル化はゴールではなく、手段なんです。サービスの高度化も働きやすい環境づくりも、いかに地域やお客さまに貢献できるかという目的につながっています。グループとしては、これからもその仕組みを絶えず考え続けていかないと。完成形は無いんです。
進み続ける西部ガスグループのデジタル化。その先には、私たち消費者の未来が絶えず映っているようです。