サステナブルな成長を目指して西部ガスのグループの未来を描く ~経営層向け研修会にて西部ガスグループの「志」を探る~ 取材レポート

2023.11.30

サステナブルな成長を目指して西部ガスのグループの未来を描く ~経営層向け研修会にて西部ガスグループの「志」を探る~ 取材レポート

皆さん「カーボンニュートラル」「サステナビリティ」という言葉を聞いたことはありますか?

気候変動が世界的に大きな社会課題となっていることは皆さんご存知だと思います。2016年にパリ協定が採択され、各国がネットゼロ(CO2の排出量を、吸収量と合わせて実質ゼロとすること。カーボンニュートラル)に向けた対応を行っている中で、日本も2030年の温室効果ガス削減目標を(2013年比で)26%から46%に引き上げました。
また気候変動だけではなく、E(環境)・S(社会)・G(企業統治)の観点から企業を評価するESG投資も非常に活発になっており、企業にサステナビリティが強く求められるようになっています。

こうした社会情勢を背景に、西部ガスグループは2021年にサステナビリティ委員会を立ち上げ、サステナビリティ経営を推進して来たそうです。
サステナビリティ委員会発足から3年目を迎えた今年、これからの企業経営のヒントとするため、新たな視点として次世代の経営モデルとして注目の「パーパス経営」について学ぶ経営層向けのサステナビリティ研修を実施。経営層が一堂に会し、オープンにサステナビリティについて自らの考えを発する貴重な研修。私たちも早速潜入し、お話をお聞きしました。

持続可能な企業経営における「パーパス経営」とは

研修ではまず、『パーパス経営』の専門家である名和高司氏の講話から始まりました。下記にその要旨をまとめました。

『パーパス経営』とは、同じ「志」を社内で持ち、社会とも共有し、その志に向けて取り組んでいく経営のこと。サステナビリティの観点だけだと、社会課題を解決することだけで社会的価値が上がるため利益を生まなくても済むが、企業経営である以上は経済的価値も上げていく必要がある。そこでパーパス経営に取り組むことで、社員がパーパスをしっかり認識してそのパーパスがお客さまに伝わるとファンが増えて売上が増える、一人一人の生産性が上がり結果的に人件費が下がる等の効果があり、社会的価値と経済的価値の向上を両立させることができる。

社会的価値(サステナビリティ)と経済的価値を同時に目指すというCSVの考え方が「パーパス経営」の根幹となっているということが分かりました。サステナビリティ経営を進めていくためには、パーパス経営の考え方がヒントになりそうです。

講話後の質問では、パーパス経営には"30年後の自社の未来を考え、高い目標を設定する"というポイントがあるという点に対して、参加者から「高い目標を掲げても、実現できなかった場合のことを考えてしまう」という意見が上がりました。

―講師:名和高司さん(以下、名和氏):高い目標を掲げることで、社内外から志の高い人が集まるもの。しかし、その目標が高すぎることで不正が起ってしまうことが一番よくないため、目標が実現性の高いものとなっているかを見極めていくことも大切。

いざ目標実現に向けて行動する際に無理が生じないよう、常に意識しながら進めることが大切だそうです。

パーパス発想を通して振り返る 西部ガスグループのこれまでとこれから

パーパス経営について学んだ第一部を踏まえ、ファシリテーターの進行のもと意見交換の時間が設けられました。グループの経営層が集い、日頃抱えている悩みや思いをオープンにして共有する試みは初のことであったため、参加者は新鮮な気持ちで臨んだようです。

「2021年にパーパスとも言えるようなグループビジョンを掲げたが、これはいきなり生まれたものではない。『お客さまの快適な生活をサポートする』という脈々と受け継がれた文化の上に、新たに脱炭素というエネルギー事業者として実現しなければならない課題を取り込んだもの。お話を聞きながら、クオリティの高い生活を提供するということとカーボンニュートラルの実現というこの2点は、改めて西部ガスグループの責務であり、ビジョンにかかげたようにパーパスの領域が広がったものだと改めて感じた。このパーパスはコアビジネスにも合致しているし、コアビジネスを中心に多角化を進めようというグループの経営方針とも合致する、よい「志」だと思う。一方で、グループ会社全員の理解・納得、そして日々の業務に繋げていくためにどのように浸透させていけばよいか悩みどころである」という具体的な進め方についての意見に対し、

―名和氏:多くの場合、一番浸透しにくいのは人事や総務などのバックオフィス部門である。まず、結果が見えやすいお客さまと直接関わるフロントオフィス部門に浸透させるのも手段の一つ。実績事例を少しずつ増やすことで、バックオフィス部門がしっかりと支えているからこそ、フロントオフィス部門が価値を生むことができる、ということを理解、実感してもらえるといいですね。

というアドバイスがありました。

さらに西部ガスグループのビジョンに関する話が出たところで、「ビジョンを実現する上では個人至上主義は捨て去り、つながりをつくっていくことが大切だと感じている。つながりを広げ新しいビジネスを創造し、地域に貢献していきたい」というビジョン実現に向けた決意のような意見も出されました。それに対して、

―名和氏:個人の力は周囲の人たちに影響を与えて広がっていくが、その結果として何を生み出すかが大切。個の実力を磨くことが、より高い志の実現に結びつく。個々人が情熱を持って取り組んでいくとよいですね。

と社員一人ひとりのモチベーションの重要性についてコメントされました。

また、「現場を司るエネルギー供給部門には、利益を大きく出しにくいという側面がある」という意見も上がりました。しかし、ガス事業の前提は安全安心、安定供給の維持・確保。それを担っているのがまさに供給部門。

―名和氏:さらに"安心安全が当たり前"ではない時代だからこそ、安心安全をしっかり担保していることは素晴らしいことなので、もっときちんと世の中に伝えていくべきだ。

といったアドバイスもありました。安心安全の確保に真摯に取り組んできた西部ガスグループ。当たり前に取り組んできたことにこそ価値があるということが、経営層の中で改めて再認識されたようです。

この他にも、企業成長を担う経営層ならではの意見が飛び交い、これまでの西部ガスグループの歩みと志の高さを再確認しつつ、ビジョンの実現に向けてそれぞれの持ち場で成すべきことを考える契機になりそうです。

研修を終えて:共通のビジョンを持ってさらなる前進へ

サステナビリティ委員会の委員長を務める西部ガスホールディングス 道永幸典代表取締役社長に、今回の研修の感想と今後の取り組みについて伺いました。

―西部ガスホールディングス 代表取締役社長道永幸典(以下、道永): まず、役員が集まり、ディスカッションできたことはとても有意義でした。そして、 この研修を通して、我々がグループとして取り組んでいることは大筋で間違っていないと確信できました。

―道永: 実は、西部ガスグループは離職率が低く、だいたい1~2%です。エネルギー供給事業で安定した基盤を持ちつつも、新たな事業に挑戦していこうという風土が社員に伝わり、それがイノベーションを生み出していこうという素地を作り出し、社員の働きがいにつながる。こうした循環が離職率の低さにつながっているのではないかと思いました。つまり、『夢が持てる会社、居心地がいい会社』であるということが、当グループなりのパーパスの核にもなっているのではないでしょうか。
グループ全体を通して、共通のビジョンを持ち、共感してくれる人が多く在籍していると実感できたことは、今後の経営においてとても重要な視点になります。これからは、このことを自覚してビジョンを実践していき、さらにその実現速度を上げていきたいと思っています。

サステナビリティ委員長の力強い言葉。ビジョンの実践と共にサステナビリティ経営が進んでいく西部ガスグループの未来がとても楽しみです。

チャレンジしやすい風土づくりを

同じく、サステナビリティ委員会の副委員長を務める西部ガスホールディングス 沼野良成取締役にもお話を伺いました。

―西部ガスホールディングス 取締役常務執行役員沼野良成(以下、沼野): 西部ガスグループは、既存のガス事業では付加価値がつけにくいという面があります。社会的インフラですので、値上げもなかなか難しい。したがって、新しい利益の創造は新規事業を通して実行していかざるを得ないと考えています。
思い返すと道永社長も、自分たちの若い頃は『サンダル履きでやろう(=履きやすく脱ぎやすいサンダルのような気軽さで、考えすぎずにまずやってみようということを表した表現)』と言われていたのですが今一度この志を思い出し、新しいことにどんどん挑戦してダメだったら次へ、を繰り返せる柔軟性を持ち続けたいと思いました。

―沼野: また、当グループはガス以外の事業も展開しているため『ガスも売っている西部ガス』とよく言っているのですが、この考えを「グループビジョン2030」とともに浸透させて推進したいと考えます。
これからは、パーパス経営「志」という考え方をグループ全体で持ち、マザービジネスで安定した利益基盤を作りながら、新規事業にチャレンジし続けることで社会に貢献していきたいですね。そのためにも、さまざまな人たちと積極的に出逢い、新しい事業にどんどんチャレンジできる体制を考えたいと思います。

委員長の言葉と合わせて、志を胸にチャレンジを進めていく西部ガスグループの歩みが益々楽しみになりました。

まとめ

グループの経営層が一同に集まり率直な意見を交わした今回の研修では、それぞれの現場の状況を共有することができました。また、社会貢献を果たしつつ企業の存在意義を発揮するという「パーパス経営」のエッセンスをサステナビリティ経営に取り入れながら、ビジョンの実現に向けてさまざまな取り組みを行っていくという思いが共有され、それぞれが何をすべきかを改めて考える貴重な機会になりました。

創立100周年を迎える2030年に向けて、そしてさらにその先も、よりよい社会の実現に向けた取り組みをリードする企業グループとして、高い目標を持ち、志を持つ人たちが描く未来を今後も見守っていきたいと思います。

講師:名和 高司(なわ たかし)さん

熊本県出身 経営コンサルタント / 経営学者
東京大学法学部卒、ハーバード・ビジネス・スクール修士(ベーカースカラー授与)。 日本、アジア、アメリカなどを舞台に、多様な業界において、次世代成長戦略、全社構造改革などのプロジェクトに幅広く従事。一橋大学大学院や京都先端科学大学にて教鞭を執るほか、企業の社外取締役や社外監査役、シニア・アドバイザーなどを務める。
『パーパス経営 - 30年先の視点から現在を捉える』や『CSV経営戦略』など著書・寄稿多数。

西部ガスグループでは、「西部ガスグループビジョン2030」の実現に向け、さまざまな取り組みを行っています。

カーボンニュートラボ

カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを率先して行うとともに、WEBコンテンツ「カーボンニュートラボ」で、未来を担う子どもたちがカーボンニュートラルについて学ぶきっかけづくりを行なっています。

HP:https://hd.saibugas.co.jp/sustainabilitypj/cnlab

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