一生ものの仲間とともに、アイデア実現の一歩を。ソウゾウ大学が育む挑戦する人財

2023.12.15

一生ものの仲間とともに、アイデア実現の一歩を。ソウゾウ大学が育む挑戦する人財

左から、Eチームののだりさん、いまちゃんさん、タカハシさん(いずれもタックネーム(大学での呼称))、事業開発部の小川周太郎さん

昨年スタートした西部ガスグループの未来を担う人財を育成する「ソウゾウ大学」。1期生より提案された事業アイデアの中から、最優秀賞に選ばれた「急速冷凍サービス」の事業化を目指して検討を進めています。今年11月には提案したアイデアの実現性を検証するため、実証実験(以下PoC)として社内販売を開始しました。

ソウゾウ大学とは、創立100周年を迎える2030年までに、変革意識を持ちグループビジョン実現に向けて挑戦し続ける"未来ソウゾウ人財"を育成するというミッションを担う企業内大学です。プログラムを通して「新たな事業を生み出すチカラ」「変革するチカラ」を身に付けていくことを目的としています。
カリキュラムの中で受講生は、自社の強みや今後起こりうる機会の探索、有識者からのインプットを経て社会課題の解決策を考え、議論に議論を重ね、試行錯誤を経て新規事業アイデアとしてまとめ上げ、最終提案を行います。最終提案で評価されたアイデアは実現可能性の調査・検討を行うPoCへと進むことができ、事業化を視野に入れてスキームの検討を行っていきます。

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アイデアをもとに実証実験へ。楽しみ、頑張った結果が形に

最終プレゼンテーションから約半年。最優秀賞に選ばれたEチームの南里莉恵さん(のだり※/西部ガス 電力事業企画部)、山中篤さん(タカハシ※/西部ガステクノソリューション エネルギーソリューション本部)、今﨑綾乃さん(いまちゃん※/西部ガスリビング 管理本部)は、ソウゾウ大学の立ち上げにも携わった西部ガスホールディングス 事業開発部の小川周太郎さんとともに、事業化に向けて事業アイデアのブラッシュアップを進めてきました。
最初はソウゾウ大学での最終提案をもとに動き始めましたが、検討を進めていく中で当初想定していた課題の仮説内容に大きく変化があったようです。

※ソウゾウ大学でのTACネーム 以降の名前はTACネームで表記します

「実証実験に向けて、より現実的に、どういったことに取り組めばアイデアを実現できるのかを考えながら進めました」とタカハシさん

―タカハシ:ソウゾウ大学受講期間中は、新型コロナウィルス感染症対策として行動制限が行われて飲食店の人員が余ったり、食材のロスが問題となっていたりした時期だったので、飲食店の料理を冷凍して販売することを検討していました。でも、コロナの分類が5類に移行して行動制限がなくなった今、飲食店はにぎわいを取り戻しており、むしろ人手不足に悩まれているような状況です。また、調理方法や食材などが多岐にわたる中、それぞれの料理に合わせて冷凍の設定を細かく行う必要があるということも判明しました。そこで、冷凍に向いている「パン」に対象を絞ることにしたんです。福岡市内のパン屋さんにご協力いただいて、そのままではロスとなってしまうパンを冷凍して販売することにました。

―進行するにあたって、皆さんそれぞれに役割などはありましたか?

―のだり:PoC推進にあたっては、事業開発部の小川さんを中心に動いています。

―タカハシ:Eチーム3人はフラットな関係ですね。誰かが営業、誰かが企画といった役割分担があるわけではなく、その都度、仕事を振り分けてバランスを取りながら対応しています。

―小川:今年、人財戦略部と協力して新たな価値創造を推進するために、業務の2割相当をそこに充てることができる「イノベーションチャレンジ制度」ができました。この制度を活用して、新規事業開発に向けて3人にも参画してもらっているんです。

―実際に、事業検討を進める中で意識されたことはありますか?

短時間勤務で働くのだりさんは「殻を破りたい」との思いでソウゾウ大学に応募した

―のだり:私たち3人は、ガチガチに目標を決めて突き進むというより、多少大変なことがあったとしても楽しみながら柔軟に進めています。気負わず頑張った結果、自分たちのアイデアが形になっていくっていうのがおもしろいんです。常に何かを意識し、これだけは守りたいというような堅苦しさみたいなものはものはないですね。

事業開発って泥臭い。お金を生み出すことの大変さを実感

今回の実証実験は3つのフェーズに分けて実施しています。フェーズ0はパンの冷凍テスト、フェーズ1は最小工数でできる販売テスト、フェーズ2は本番環境に近い形での販売テストです。11月からスタートした実証実験はフェーズ1。西部ガス本社ビルと西部ガスリビング本社ビルの多目的スペースに冷凍庫を設置し、従業員に向けて冷凍パンの無人販売を行っています。

実証実験として、西部ガス本社に設置された冷凍パン販売用の冷凍ストッカー。そばには解凍用の電子レンジとオーブントースターも

いよいよ無人販売がスタートしましたが、ここに至るまでに立ちはだかった課題などはあったのでしょうか。

―タカハシ:ヒアリングは大変でしたね。福岡でも人気のパン屋さんに絞って、分担して営業しよう!となったものの、ヒアリング先の選定やアポ取り・折衝など営業経験のないメンバーもいる中で最初は大変でした。ただ、「西部ガスです」と言うとどのパン屋さんも話を聞いてくださるので、それはとてもありがたかったですね。私は普段の業務で営業を担当しているので商談には慣れているつもりなんですけど、結果的には全部断られました。その一方で、普段は総務の仕事をしているいまちゃんがバンバンアポイントを取ってきて(笑)。

ソウゾウ大学1期で、事務局として奔走した小川周太郎さん。現在は、事業開発部で、「冷凍パン販売」の事業化実現を目指している

―小川:新規事業の開発って、泥臭いんですよね。傍から見るとキラキラしていて、楽しそうだなって思うし、確かにそういった一面もある。でも実情は泥臭い。それに会社も所属もバラバラで、それぞれに家庭があるメンバーが集まってとなると、時間の制約もある。そんな中で、お互いできない部分を支えながらやっている。このメンバーだからできたんだろうなって思います。私も、今ではメンバーがどう工夫していくかを楽しみながらやれるようになりました。大変だけど、楽しいですよ。

役割分担はないけれど、自分ができることを考えて、とりあえずやっておく。それが、誰かの、何かの助けになっているんじゃないかって。そのマインドが芽生えたかなって思います」

―実際に、商品を販売する段階になりましたが今の率直なお気持ちを聞かせてください。

―いまちゃん:思い描いていた「喜んでくれたらいいな」「買ってくれたらいいな」っていうものが現実になっていて、嬉しかったです。「おいしかったよ」って声をいただけて、想像していたことが形になるって、こんなに嬉しいんだって。それに実際に販売してみて初めて、「こうしたら売れるな、もっと買ってもらえるな」と、より小さい改善点にも気付くようになりました。これからは、実証実験で得た気付きを折り込みながら柔軟に軌道修正していきたいですね。

―のだり:ようやくここまで来た、という実感はまだあまり湧いていないのが正直なところ。でも売り上げを見ると徐々に現実味を感じてくるし、自分たちが形にしたコトからお金が生れるのは単純に嬉しいです。一方で、最初は物珍しさもあって購入してくれても、実証実験が終了する2カ月先まで売れ続けるのかなっていう不安もあります。中には一人でふらっときて購入される方もいたので、こういうふうに冷凍パンが当たり前に提供されて、小腹が空いたときやランチタイム、夜食などの選択肢の一つになってくれたらいいなって思います。

―小川:売り上げにすれば1日数千円から1万円を超えるくらい。規模的には小さいけれど、お客さまからお金をもらうということがどれだけ大変か実感できました。インフラ企業って、先輩たちが築いてきたものや今ある資産でお金が生み出されています。ありがたいことだけれど、自分たちで作った事業で稼ぐことがどれだけ難しいか実感しづらい環境だと思うんです。だからこそ、アイデアが形になって、お金をいただける状況は達成感ややりがいを感じることができて、おもしろい。今回の実証実験がきっかけになって、ソウゾウ大学からだけでなく、それ以外でも社内で新しいことにチャレンジする機運が高まっていってほしいと思っています。

実際に実証実験でパンを購入した方に感想をお聞きしました。その一部をご紹介します。

―立元さん:なかなか購入する機会がなく諦めていた人気店のパンを購入できて嬉しい。会社で手軽においしいパンを買うことができて大満足です!

―井上さん:平日は買いに行くことが出来ないパン屋のパンを、会社で簡単に購入できることが嬉しいです。 種類も想像以上にたくさんあり、今後も色々購入してみたいと思いました。

―舛田さん:自然解凍後に少し温めるだけで美味しくいただけました。惣菜パンも菓子パンもお店と変わらない味でとても驚きました。今では気軽に購入しています。

―山﨑さん:電子レンジで温めるだけで、食感も味もしっかり再現できました。社内で購入できるので、雨の日の昼食に活用しています。退社時に購入して家で食べている方もいらっしゃるそうで、自分も週末の朝食用に購入して帰りたいと考えています。

皆さんに好評のようですね。"つなぐパン"を通して、Eチームの想いは周囲に届いているようです。

会社の魅力は「人」。ソウゾウ大学で繋がった一生ものの仲間

新しく事業を立ち上げるのは今回が初めてというメンバーの中で、自分たちのアイデアの事業化を目指してきた皆さん。今回の経験を経て、自身の変化や今後に活かしたいことなどはあるのでしょうか。

―タカハシ:これまでの仕事の中では、新しいことを始めちゃダメというわけではないけれど、自分を含めて誰もやろうとしていませんでした。今回の経験で学んだことを活かして、今後は通常の業務の中でも新しいことにチャレンジしていけたらと思いましたね。

―いまちゃん:パン屋さんにお声掛けする前までは、お店の人に嫌な反応をされたらどうしようって不安感が勝っていたんです。でも、実際にアポイントをとってお話をしてみると、喜んでもらえたり、おもしろいねって共感してもらえたり、嬉しい反応が多かったんです。怖がりすぎずにとりあえずやってみる・行動してみることの大切さを実感しました。

―のだり:私は、ママで短時間勤務。仕事は好きだけれど、やっぱり家庭が優先という気持ちがあって、今までは自分で制限をかけていました。でも、そんな自分の殻を破りたいと思ってソウゾウ大学に応募しました。1年間やってみて、社会人人生の中でも、大きなターニングポイントになったと実感しています。もちろん、家庭も大事だけれど、夫と協力をしながら残業や出張だってするし、飲み会にも行けるときには行きたい。自分の中で、考え方が変わりました。

「先輩でも、後輩でもない。一生の友だち。何十年か後、仕事を引退したらみんなでこのときの思い出話をしてみたい」とのだりさん

―今後も、多くのソウゾウ大学受講生がチャレンジを進めていくことになりますが、未来の受講生に向けて応援のメッセージをお願いします。

―いまちゃん:ソウゾウ大学の受講が終了して強く感じているのは、メンバーが三人で良かったということ。以前なら踏み込めなかったことも、二人が一緒だという安心感から一歩一歩踏み出すことができました。二人とのつながりができたことが私にとっては一番大きかったです。もし最優秀賞が取れてなくても、このつながりは消えていなかったと思います。第二期の受講生の皆さんも一人ひとりとの出会いを大事にしてもらえたら、自分が変わるいいきっかけになるんじゃないかな。

―タカハシ:ソウゾウ大学が目指す「新しいことをソウゾウして変革できる人財」って、これから必ず必要になってきます。エネルギー情勢を考えると、ガス事業だけで生き残っていくことは難しい。だからこそ、そういった人財が生まれてこないと会社の将来はないと思います。自分のため、会社のためになるよう、今後も受講生が増えてグループ内に志を同じくする仲間が増えていくことを願っています。

―のだり:私にとって同じチームの二人、そして小川さんも、後輩だけど後輩じゃない一生の友達ができたなって感じています。改めて、うちのグループの魅力って人なんだと思いました。企業として成長していく上で、そういった人の良さゆえの甘さがマイナスに働く部分もあるかもしれないけど、ソウゾウ大学はその“良さ”も“弱み”も同時に伸ばしてくれて、受講生が新しい会社の在り方を伝えていける存在になれると思う。怯まずに、まずはぜひチャレンジしてもらいたいです。

―小川:思い切って、ぶっとんでほしい。ソウゾウ大学は、突拍子がないことをどんどん言える環境です。何を言ってもいいし、どんなアイデアを出してもいい。失敗しないようにきれいにまとめようと80点や90点を狙うのではなく、110点、120点を取りにいってほしいですね。事業を形にするときは、我々、事業開発部がサポートします。だから、あまり気負わずに、自分たちのソウゾウしたいこと、やってみたいこと、なんでこうじゃないんだっていう社会や会社に対する怒りみたいなものを含めてぶつけてほしい。思い切って学んで、ソウゾウして、いろんな思いをぶつけてほしいです。

まとめ

プロジェクト名は、ソウゾウ大学で出会ったつながりを思わせる「TSUNAGU-PAN」に

ソウゾウ大学発の事業実現を目指して、一歩一歩着実に計画は進んでいます。同時に、ソウゾウプランナー(ソウゾウ大学の終了生)たちの経験値は上がり、自己変革や挑戦する精神はさらに大きく高まっているのではないでしょうか。そして、その前向きに挑戦する姿は、周囲にも影響を与えていくに違いありません。

ソウゾウ大学で芽生えた芽が成長を続け、花を咲かせ、実を結ぶ。その日が待ち遠しくて仕方ありません。