2025.12.23
初の統合報告書を発行!グループ従業員や社会と対話するきっかけとなるツールに
2025年8月、西部ガスグループは初めて「統合報告書」を発行しました。2023年にプロジェクトチームが発足し、グループ内外と対話を重ねながら2年がかりで制作した歩みを振り返ります。サステナビリティ推進チームと統合報告書プロジェクトのリーダーを兼任する浅尾真士さんに、初挑戦ならではの奮闘と見えてきた課題について語ってもらいました。

「統合報告書って何だろう?」からのスタート
―統合報告書を初めて制作することになった経緯を教えてください。
―浅尾さん:西部ガスグループはガスエネルギー事業を中心に、電気その他エネルギー事業・不動産事業・食関連その他事業という4つの事業を展開しています。従来は、各事業の概要や強みを伝える「会社案内」があれば、グループについて社内外に説明ができました。
しかし経営環境が変化し、「企業として事業を通じて社会課題をどのように解決しながら持続的に成長していくか」を問われる時代になりました。企業の存在価値や成長ストーリーを、投資家・取引先・お客さま・グループ従業員が理解するためのコミュニケーションツールとして統合報告書が求められるようになったのです。
―統合報告書には、どのような情報が掲載されているのでしょうか。
―浅尾さん:売上高や利益といった実績、中長期的な経営計画やビジョン(目標)だけでなく、経営トップの考え方や熱意、企業風土、多様な人財の長所を育てる方法、環境問題をはじめとする社会課題解決への取り組みなど、数字では表しにくい情報も網羅しています。簡単に言えば、これ一つで企業の全体像を把握でき、企業の価値や信頼性を感じていただける内容になっています。
私自身、プロジェクトチームのリーダーに就任してまず着手したのは、会社案内と統合報告書の違いを整理することでした。そのうえで、他社の統合報告書の構成などを比較し、トップメッセージや経営ビジョン、中長期経営計画を達成するための事業戦略がしっかり伝わる見せ方を研究しました。

「連絡係」から、企業の成長ストーリーの「つなぎ手」に
―プロジェクトチームのリーダーを任された時の思いは?
―浅尾さん:「自分に務まるだろうか」というプレッシャーに負けそうでしたね。「西部ガスグループにとってサステナビリティ(持続的な成長)とは何か」という大きな問いに向き合おうと、手探りの日々でした。特に苦労したのは、グループ内の10数部署の上長に会いに行き、統合報告書を制作する意義や背景を説明すること。単なる事業紹介ではなく、「西部ガスグループは各事業を介して、未来の社会にどんな価値を提供できるのか」を伝えたいから協力してほしいと説得して回りました。すんなりと賛同してもらえる場合もあれば、「これまでと同じ情報でいいのでは」と私たちの思いを汲んでもらえないことも。
統合報告書の価値を伝える難しさに悩んでいると、チームの経験豊富なメンバーが「各部門の皆さんと一緒に統合報告書の制作に取り組めるように、信頼関係をじっくり作っていこう。それぞれの思いやこだわりに耳を傾けることが大事」とアドバイスしてくれたんですよ。

―最初は、グループ内で統合報告書の制作に対する温度差があったのですね。
―浅尾さん:最初の1年は各部門に何度も足を運び、統合報告書を作る意義について対話を重ねました。その過程で、「西部ガスグループが社会にどんな価値を提供し続けながら、未来に向けて持続的に成長していくのか。そのストーリーが、プロジェクトチームですらまだ見えていない」という大きな問題に気づいたんです。
そこで、各部門の方に「今どんな価値を社会に届けているのかを掘り起こす作業から始めましょう」と提案しました。私たちは、統合報告書に掲載する原稿を集めるだけの「連絡係」になってはいけない。4つの事業が社会に提供する価値を束ねて未来に向かう1本の成長ストーリーとして広く皆さんに伝えることが私たちプロジェクトチームの使命であり、そのストーリーをグループ内外に広めていく「つなぎ手」になろうと。統合報告書はグループの事業と事業、人と人、企業と社会をつなぐものだと腹落ちした瞬間でした。
「地域とのつながり」を深める価値を再発見
―統合報告書の制作を通じて再発見したことはありますか。
―浅尾さん:私は長らく財務や法務部門にいたので、各事業を有価証券報告書などの数字をもとに評価してきたんですね。現場意識を踏まえた見方が足りなかったのだと思います。統合報告書を制作するうちに、以前は「お金になりにくいのになぜやるんだろう」と捉えていた事業や活動への見方が変わっていきました。
たとえば、統合報告書の特集で紹介している「地域やお客さまとのつながり強化」の事例もその一つ。2025年6月、福岡市内にまちの保健室「たねばこ」を開設しました。看護師資格を持ったコミュニティナースが地域の皆さんに寄り添って暮らしの悩みを聞き、心身の健康づくりをサポートする場です。他には、宗像市や他企業と連携する団地再生プロジェクトとして、コミュニティ施設「ひのさと48」も運営しています。
こうした活動から得られる経験が、地域の課題やニーズを吸い上げて解決する新しいサービスの開発にもつながっています。また地域が活気づけば、自ずとガスや電気の使用量が増えてエネルギー事業の利益として還元されるほか、事業に対する地域住民からの理解が得やすくなるなどのメリットもあります。地域に根ざしたエネルギー事業・まちづくり事業のノウハウがある西部ガスグループだからこそ、事業の成長と地域課題解決を両立できるのです。長期的視点で見ると、未来を豊かにする活動は私たちにとっても社会にとっても価値が高いと再発見しました。

まちの保健室「たねばこ」

「ひのさと48」でのクリスマスイベントの様子
―地域活性化の活動はグループ内、投資家やお客さまの間でよく知られていないのでしょうか。
―浅尾さん:グループ従業員は活動の存在は知っていても、現場の思いや苦労を知る機会がなかったんですね。「ひのさと48」を訪ねて、働く人も地域の皆さんも本当に楽しそうで驚きました。ただしその陰には、日々地域の人たちと対話を重ねて地域のデリケートな課題に向き合う地道な努力や、成果が見えにくい取り組みを事業化するための苦労があることも痛感しました。
この他、グループ内の九州各地に45社ある子会社でも多様な地域活性化活動を展開しています。こうした取り組みにもっと光があたって、西部ガスグループならではの価値ある活動としてグループ内外から評価されるようにしたい。ホームページの「サステナビリティ」ページで事例を紹介したり、統合報告書で取り上げたりすることで「自分たちもやってみよう」という挑戦の波をグループ内に広げたいんですよね。
悩んだらトップメッセージに立ち返ろう
―課題だった「未来への成長ストーリー」は見えてきたのでしょうか。
―浅尾さん:それが一番難しかったですね。ストーリーの出発点は、社会にどんな課題があるのかを整理し直すこと。その中から西部ガスグループとして力を最大限に発揮できる課題を選定し、4つの事業を戦略的に展開しながら社会に新たな価値を提供していくという流れです。西部ガスグループと社会と人々が共創しながら成長・発展する好循環が続けば、2030年のありたい姿「人を、街を、社会をつなぎ、未来をつくる。」に近づき、さらには2050年に目指すゴール「共創型のサステナビリティ先進社会の実現」へ辿り着ける! こうした成長ストーリーを誰もが一目でわかる図式にできないものかと、チームで何度も議論を重ねました。やがて、ある気づきが突破口になったんです。
―何が「突破口」になったのでしょう?
―浅尾さん:目指す姿に近づくために私たちの「強み・財産」となるものは何だろう? と話し合い、立ち返るべきは西部ガスグループを率いる加藤社長のトップメッセージだと気づきました。統合報告書の制作にあたって実施したインタビューで社長が90分間熱を込めて語ってくださいましたが、その生の声にこそストーリーの羅針盤となる言葉が散りばめられていました。
私たちが価値を創造しゴールを実現するための源泉は、エネルギー事業を通じて培った地域やお客さまとの強いつながり、お客さまの信頼に応え挑戦し続ける「人」の力、ひびきLNG基地を中心とした低・脱炭素社会を実現するサステナブルなインフラ網。自分たちの言葉で説明できるところまで深く考えることで西部ガスグループの「強み」を再認識し、「私たちはどこに向かおうとしているのか」という真っすぐな成長ストーリーが見えてきました。このストーリーを西部ガスグループ内で共有するプロセスがさらなる強みになって、成長を飛躍させる力になると信じています。

「つながりとは何か」をともに考える対話ツールに
―2025年の統合報告書への反響は届いていますか?
―浅尾さん:おかげさまでIR(投資家向け広報)では高い評価をいただき、グループ向けに実施したアンケートにも回答が寄せられています。手応えを感じているのは、「西部ガスグループが何のために各事業をやっているのかがよく理解できた」という声が多いこと。これまでは自分が関わる事業や業務しか見えていない人も多く、「西部ガスグループは社会からどんな存在意義のある企業と思われているか」という全社的な視点が足りていなかったのではないでしょうか。
日々の業務はグループの各事業や経営戦略とどうつながり、未来の社会やお客さまにどんな価値を届けられるのか、「つながり」とは何か。グループ内で考え、対話するきっかけとして統合報告書を使ってもらえたらうれしい。率直なご意見をお寄せいただき、来年の制作に活かしていきたいと思います。
まとめ

統合報告書は発行して終わりではありません。次はもっとこうしたいという課題が次々と見つかっています。「つながり」という言葉がグループ従業員・投資家・地域社会を結ぶ共通のキーワードとして一層浸透するように、来年は「西部ガスグループはなぜこの社会課題に取り組むのか」というメッセージをより強く打ち出したい。
2030年、2050年の先に「西部ガスグループがこんなこともできたら面白いね」という未来のワクワク感をグループ内で共有できるように、私たち統合報告書プロジェクトのメンバーも成長ストーリーの「つなぎ手」として進化し続けます。
「西部ガスグループ統合報告書2025」はこちら
https://hd.saibugas.co.jp/ir/ir_info/integrated_report
