気候変動
西部ガスグループは、気候変動対応を事業の存続に影響を及ぼしうる経営の重要課題とし、TCFD提言の枠組みにそって、生産から廃棄までを含む、事業活動全般における温室効果ガス排出量の把握と削減に取り組みます。
上記の考え方の下、マテリアリティとして以下を特定しています。
- ●気候変動への対応
TCFD提言への賛同
西部ガスホールディングスは、TCFD提言※が気候変動問題に関する情報開示や、リスクへの適切な対応を行う重要な枠組みであると考え、2021年10月26日 TCFD提言に賛同いたしました。TCFD提言に沿った気候変動対応に関する情報開示に取り組んでまいります。
- ※TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures
G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース」を指します。TCFDは、「気候変動問題に対して、企業がどう取り組むのか」という情報の開示を推奨しています。
外部環境認識
気候変動が加速し、世界各地において自然環境・人々の暮らし・企業活動に様々な影響や被害が現れ始めています。気候変動への取り組みとして、パリ協定が採択され各国がネットゼロに向けた対応を行っており、日本政府は、2030年の温室効果ガス削減目標を26%から46%(2013年比)に引き上げると表明しています。こうした中、企業による事業を通じた脱炭素社会への貢献が求められています。
我々は企業として、自社の事業を通じて、温室効果ガス排出量を削減していく気候変動の緩和と気候変動の影響に備える適応を行いながら、持続的成長を目指します。
また、企業に対する気候関連課題に関する情報開示要請も高まっていることから、開示に向けた取り組みを進めます。
方針
気候変動は、当社にとってリスクであると同時に新たな機会につながる重要な経営課題であると認識しています。気候変動への取り組みを積極的にまた能動的に行うことは、中長期的な当社の企業価値向上に繋がるものであると考え、ステークホルダーと適切に協働し、自社のみならず社会全体に利益をもたらすことを目指します。また、こうした取り組みを通して、SDGsやパリ協定で掲げられた目標達成への貢献を目指します。
ガバナンス
1.体制
気候関連事項に関するガバナンス体制図
2.取締役会の監督体制
取締役会は、気候関連の重要事項について、定期的に(原則年2回)経営会議より報告を受け、監督します。
また、気候関連事項に対処するための指標と目標に対する進捗状況については、サステナビリティ委員会にて審議した後、サステナビリティ委員会から経営会議へ報告し、その後経営会議から取締役会に報告することで、取締役会による適切な監督が行えるよう体制を整えています。
3.経営会議の役割
経営会議は、定期的に(原則年2回)取締役会へ気候関連の重要事項について報告します。
また、経営会議は、サステナビリティ委員会より定期的に(原則年2回)報告を受け、サステナビリティ委員会にて審議された気候関連事項の審議結果を考慮して、議長である社長執行役員が自社の気候関連事項戦略・事業計画やリスクマネジメント方針等の見直し・指示を行っています。
4.サステナビリティ委員会
サステナビリティ委員会は、定期的に(原則年2回)気候関連事項について審議します。サステナビリティ委員会は、統括責任者(気候変動の最高責任者)である社長執行役員が委員長を務め、担当役員、関連部門長で構成されます 。
サステナビリティ委員会では、気候変動が事業に与える影響について年1 回以上評価を行い、重要事項について経営会議へ報告します。
また、サステナビリティ委員会は、気候関連のリスクと機会の特定及びその影響度について審議します。
気候関連のリスクに関しては、サステナビリティ委員会からグループガバナンス委員会へ報告され、グループガバナンス委員会で特定されます。気候関連の機会は、サステナビリティ委員会から経営会議へ報告され、経営会議にて審議され、議長である社長執行役員によって特定されます。
特定されたリスクと機会は、サステナビリティ委員会が所管します。サステナビリティ委員会は、特定したリスクと機会に関する対応策および目標について審議し、実績レビューなど進捗状況を評価します。
戦略
当社は、当社グループの中核事業であるエネルギー事業を対象として気候関連事項におけるリスクと機会を特定し、選択したシナリオにおける事業への影響を検討しました。
TCFDの枠組みに沿って、移行リスク・物理的リスク及び機会という観点から検討し、下記の通りそれぞれ特定しました。リスクと機会を特定した後に、政府の脱炭素政策の進展という軸とエネルギー業界の産業構造の変化という軸の2つの軸から複数のシナリオを想定し、当社グループのレジリエンスを検証しました。
1.重要な財務影響を及ぼすリスクと機会を特定するためのプロセス
気候関連事項におけるリスクと機会において当社のリスク管理規程を適用し、想定されるリスクと機会の中から重要な財務影響を及ぼすリスクと機会の特定を行っております。また、特定にあたっては、設定した時間的範囲も考慮しています。
2.気候関連事項の財務計画策定プロセスへの反映方法及び優先順位付け
サステナビリティ委員会は、特定された気候関連事項におけるリスクと機会について関連各部からの報告を基に審議し、その結果を経営会議へ報告します。
経営会議の議長である社長執行役員は、サステナビリティ委員会からの報告を基に経営戦略および財務計画等への反映を審議し決定します。その後決定された内容を取締役会に報告することで、取締役会による監督を受けています。
これらの特定された気候関連事項のリスクと機会については、設定した時間軸(短期・中期・長期)や検討した財務への影響度合い等を考慮し、対応にあたっての優先順位付けを行います。
当社は、経営戦略および財務計画等を策定するにあたり気候関連事項を反映させています。
3.シナリオ分析
選択した シナリオ |
特定したリスク・機会 | ドライバー | 時間軸 | 財務 インパクト |
対応策 | |
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種類 | 概要 | |||||
IEA NZE 2050 | 移行リスク (市場) |
お客さまの電化意識の進展により、家庭用では新築物件のガス供給需要が低下、既存物件ではオール電化への転換、業務用では、設備の徹底した電化を想定した。当社グループは電気とガスをセットで販売しているが、ガス需要の低下によりセット販売の減少やガス機器の販売低迷による売上減少が想定される。 | 電化の進展 | 中~長期 | 大 | ・カーボンニュートラルの実現に至るトランジション期(移行期)においては、天然ガスが重要な役割を担っていることを周知し、引き続きガスと電気のセット販売や周辺サービスを当社グループ一体となって提供していく。 ・電力事業では、LNGを燃料としたひびき発電所での発電事業を軌道にのせ、九州地域の発電設備における低・脱炭素化を推進していく。 ・カーボンニュートラルの推進にあたり、再生可能エネルギーの普及拡大を加速させ、電源の脱炭素化を促進するとともに、新たなサービスの創出やビジネスモデルの構築に取り組んでいく。 |
移行リスク (市場) |
天然ガスは他の化石燃料と比べ低炭素なエネルギーであるため、世界的な需要増が生じている。世界的なLNGの需給ひっ迫によりLNGが調達できないリスクや購入価格の大幅な上昇による調達コストの著しい増加が想定される。 | 天然ガスの 需要 |
短・中・長期 | 大 | ・LNG調達に影響する情勢や調達先の情報収集を行い、リスクに対して早期に対応できるよう準備する。 ・調達先や調達方法の多様化等、リスクによって生じる影響を抑制する対策を引き続き検討する。 |
|
物理的リスク (急性) |
九州地域における異常気象の頻発による豪雨災害(冠水や土砂崩れ等)が増加し、当社グループのガス供給設備が被害を受け、ガスの供給に支障が生じる可能性がある。ガスの供給が途絶えることは、お客さまの生活に支障をきたすだけではなく、市民の皆様からの信頼が失墜するおそれもある。また、ガス供給の復旧にあたって人的・金銭的な負担は甚大である。 | 災害の 発生頻度 |
短・中・長期 | 大 | ・ガス導管を強靭性に優れたポリエチレン管へ取り替え等、大規模自然災害や重大な事故など不測の事態への対応力を強化するなど、お客さまの安全・安心と安定供給体制を継続して強化していく。 | |
物理的リスク (慢性) |
九州地域における冬期の気温上昇が今後も継続することが見込まれる。その結果、各家庭でのガス使用量が減少し、ガス売上高が減少する。 | 冬の 平均気温 |
短・中・長期 | 中 | ・ガス事業以外の収益を拡大することにより、ガス売上減を補填する。 ・ガス事業に関しては、家庭用の床暖房の需要を増やす。 |
|
機会 (エネルギー源) |
カーボンニュートラル実現への潮流が加速している中、移行期間においては、他の化石燃料と比べ低炭素なエネルギーである天然ガスの需要が増加するため、ガスの売上増加が見込まれる。 | 移行期間に おけるガス需要 |
短・中・長期 | 大 | ・石油・石炭から天然ガスへのシフト(燃料転換)を強力に推進するとともに、カーボン・オフセットLNGなどお客さまの低炭素化に貢献するエネルギー事業を提供する。 ・メタネーションや水素実証事業の検討や産官学連携および他社とのアライアンスによる新技術の導入を検討していく。 ・天然ガスシフトを推進するため、安定的なLNG原料の確保やガス製造、供給設備などガスインフラ整備を検討する。 |
|
機会 (製品・サービス) |
当社グループはガスと電気のセット販売を行っている。エネルギー供給構造高度化法等の方針により小売電気の電源を一定程度再エネに置き換える必要があり、また、再エネ由来の電気を求めるお客さまも増加傾向にあるため、再エネ由来の電気とガスとのセット販売の売上が増加すると予測している。 | 再エネ 導入政策 |
短・中・長期 | 大 | ・新たな再エネ電源の開発を進め、発電容量を拡大し、PPAやVPPなどの新たなサービス創出やビジネスモデルの構築を検討していく(一部実施済み)。 | |
機会 (製品・サービス) |
政府によるカーボンニュートラル推進に呼応し、当社グループはガスの脱炭素化を進めるべく、メタネーション・ネガティブエミッション・水素利用等を主力技術と位置づけ、開発を進めることで新たな事業機会創出が見込まれる。 | 脱炭素技術の 進展 |
中・長期 | 大 | ・メタネーションにおける大型化・コスト面での課題については、ひびき基地を有効活用し、新技術導入の実証実験の実施を検討していく。 ・学術機関等と連携し、CO2回収技術の導入やバイオガス・水素の利用に取り組む。 | |
機会 (市場) |
脱炭素化に向けた動きが海外でも進展しており、それに伴い海外でのLNG需要拡大が見込まれる。当社グループが有するひびきLNG基地の地理的優位性や拡張性を活かし、中国や東アジアへのLNG販売機会が予測される。 | 中国・ 東アジア における LNG需要 |
短・中・長期 | 中 | ・LNG基地の地理的優位性や拡張性を戦略的に活用し、ISOコンテナ、中小型船等のLNG再出荷事業を強化していく。 ・様々な企業等と連携を取りながらLNGの販路の拡大を推進する。 ・事業に影響する情勢や調達先の情報収集を行い、リスクに対して早期に対応できるよう準備する。 |
|
IEA STEPS IPCC RCP4.5 |
移行リスク (市場) |
天然ガスは他の化石燃料と比べ低炭素なエネルギーであるため、IEA NZE 2050シナリオに比べ影響度は低下するものの、世界的な需要増が生じている。世界的なLNGの需給ひっ迫によりLNGが調達できないリスクや購入価格の大幅な上昇による調達コストの著しい増加が想定される。 | 天然ガスの需要 | 短・中・長期 | 中 | ・LNG調達に影響する情勢や調達先の情報収集を行い、リスクに対して早期に対応できるよう準備する。 ・調達先や調達方法の多様化等、リスクによって生じる影響を抑制する対策を引き続き検討する。 |
物理的リスク (急性) |
※上記物理的リスク(急性)と同様 | |||||
物理的リスク (慢性) |
※上記物理的リスク(慢性)と同様 | |||||
機会 (エネルギー源) |
影響なし | 移行期間における ガス需要 |
短・中・長期 | 無 | 影響なし | |
機会 (製品・サービス) |
影響なし | 再エネ導入政策 | 中・長期 | 無 | 影響なし | |
機会 (製品・サービス) |
政府によるカーボンニュートラル推進は停滞しているものの、当社グループはガスの脱炭素化を進めるべく、メタネーション・ネガティブエミッション・水素利用等を主力技術と位置づけ、開発を進めることで新たな事業機会創出が見込まれる。 | 脱炭素技術 の進展 |
中・長期 | 大 | ・メタネーションにおける大型化・コスト面での課題については、ひびき基地を有効活用し、新技術導入の実証実験の実施を検討していく。 ・学術機関等と連携し、CO2回収技術の導入やバイオガス・水素の利用に取り組む。 |
● 選択したシナリオ | 国際エネルギー機関(IEA)が策定したWEO NZE 2050シナリオ 国際エネルギー機関(IEA)が策定したWEO STEPSシナリオ及びIPCC RCP 4.5を選択 |
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● 時間軸 | 短期=1年(単年度計画と同期間) 中期=3年(中期経営計画と同一期間) 長期=2030年(日本のNDCにおける中期目標と同期間) |
● 財務インパクト | 社会からの評価、業務上の負荷等の観点から影響度を整理しております。 |
※長期を2030年時点に置いているため、物理的リスクに関してはシナリオによる差異は想定しておりません。 |
■選択したシナリオ@ IEA NZE2050
上記シナリオを選定し、当社グループの事業環境として以下を想定しました。
- 国の政策や産業構造変革が加速度的に進展し、エネルギーは極限まで電化され、電化できない熱エネルギー分野においては、環境負荷の低い天然ガスや脱炭素メタンが使用されている。
- 電源構成における再生可能エネルギーの占める割合が大幅に増加しており、メタネーションなどの新技術の研究開発が活発に行われている。
- 海外においても同様に石炭・石油から天然ガスへの燃料転換が進むとともに、電化が進むことでGHG排出量削減が推進されている。
- 当社グループの事業エリア(九州)における暴風雨・洪水や気温上昇に関する対応は現状よりやや改善が見込まれるものの、気候変動の物理的リスクの程度は現状のまま推移する。
■選択したシナリオA IEA STEPS/IPCC RCP4.5
上記シナリオを選定し、当社グループの事業環境として以下を想定しました。
- 国の政策が乏しく産業構造の変換には至っておらず、エネルギーの電化は現状と変わらない状況である。
- エネルギーの需給バランスは現状と変化はなく、引き続き石炭・石油が燃料として使用されており、天然ガスの需要においても変化はない。
- 電源構成における再生可能エネルギーの割合は一定程度増加するものの、メタネーション等の新技術の研究開発は進まない。
- 海外においても気候変動政策は現状のまま推移している。
- 当社の事業エリア(九州)における暴風雨・洪水や気温上昇に関する対応は現状よりやや改善が見込まれるものの、気候変動の物理的リスクの程度は現状のまま推移する。
選択したシナリオと時間軸及びシナリオ選択理由
当社グループは、シナリオを選択するにあたり、パリ協定に沿ったシナリオ、即ち2021年10月22日に日本が提出したNDC(2050年カーボンニュートラルと整合的で、野心的な目標として、2030年度において、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す)が達成されることを念頭においたシナリオとして、国際エネルギー機関(IEA)が策定したWEO NZE 2050シナリオを選択しました。
また、上記シナリオと対極にあるシナリオとして日本のNDCが達成されない、即ち日本政府が掲げている政策(第6次エネルギー基本計画やグリーン成長戦略)が予定通り実行されないシナリオとして、国際エネルギー機関(IEA)が策定したWEO STEPSシナリオ及びIPCC RCP 4.5を選択しました。尚、当社グループが設定している長期の時間軸は、2030年としているため、物理的リスクに関してはシナリオによる差異は想定しておりません。
シナリオ分析結果
移行リスクが高まると想定されるIEA NZE2050シナリオにおいては、電化が進むことにより当社のガスやガス機器の販売低下が予想され、また一方でネットゼロに達するまでの移行期間における天然ガスの需給ひっ迫によるLNG調達リスクが生じています。このようなリスクが想定されるものの、日本国内においてはネットゼロへの移行期間における石油・石炭から天然ガスへの燃料転換によるガスの売上増加や再エネ由来の電気とガスのセット販売による売上増加といった機会もあると想定しています。更に、カーボンニュートラルを推進するためのメタネーション・ネガティブエミッション・水素利用といった技術開発により新たな事業機会の創出も想定しています。海外においては中国・東アジアのLNG需要の拡大が見込まれることから当該地域へのLNG販売機会があると考えています。
移行リスクによる影響をほとんど受けないと想定したIEA STEPS及びIPCC RCP4.5においては、世界的なLNG需要のひっ迫によるLNG調達リスクはある程度あると想定されるものの、電化による当社グループのガスやガス機器の販売低下は生じる可能性が低いと考えております。また、機会についてはネットゼロに向けた政策が実行されない前提に立つと、機会が生じる可能性は基本的に乏しいと考えておりますが、先に上げた技術開発については長期視点でネットゼロに寄与する事業を創出することで機会となり得ると考えています。
物理的リスクに関しては、当社グループは2030年までを長期の時間軸として設定したため、シナリオによる差異は想定しておりませんが、いずれのシナリオにおいても九州地域における豪雨災害によりガス供給に支障が生じるリスクや九州地域における冬期の気温上昇によるガス販売量低下といったリスクを想定しています。
気候関連のリスクに対する当社グループのレジリエンス
当社グループは、グループ中期経営計画の下、中核とするガスエネルギー事業以外の電力その他エネルギー事業や不動産事業の事業構成比率拡大を柱とする事業構造の変革に取り組むとともに、気候関連の各リスクに対する対応策を策定しています。詳細は表1に記載の通りです。移行リスクが加速するシナリオ(IEA NZE2050)において想定されるリスクはあるものの、適切な対応策を取ることで当社グループの中核事業であるガスエネルギーへのリスクの影響度を低減することが可能であること、また寧ろ当該シナリオ下においてはリスクよりも当社グループにとっては電力その他エネルギー事業等における機会が増加する好機であると判断しております。
また、ネットゼロへの政府政策の執行が鈍化するシナリオ(IEA STEPS及びIPCC RCP4.5)においては、移行リスクの影響度は低下することが想定されますが、脱炭素技術(メタネーション・ネガティブエミッション・水素利用)への研究開発を進め、長期視点でネットゼロに寄与する事業を創出することでいずれのシナリオにおいても当社グループの事業が継続発展できることを確認しています。
物理的リスクについては、2030年までを長期と捉えた場合、現在発生している事象が継続もしくは増加すると想定し、リスク対応策を策定しております。
気候変動に対する移行計画
当社グループは、2022年12月に「西部ガスグループカーボンニュートラルアクションプラン」を策定し、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを具体化し、推進しています。気候変動への対策、脱炭素社会への移行に向けて取りまとめた、「気候変動に対する移行計画」については、こちらをご覧ください。
リスク管理
1.体制図
気候関連事項に関するリスク管理体制図

2.気候関連リスクの特定方法
プロセス
気候関連のリスクに関しては、サステナビリティ委員会が審議を行い、その結果をサステナビリティ委員会事務局とリスク管理事務局で連携し、グループガバナンス委員会で特定されます。
重要度を決定する方法
気候関連のリスクの重要度を評価・決定するにあたり、当社は、以下の項目を考慮しています。
・時間軸
・移行リスク
・物理的リスク
・リスクが顕在化する可能性
最終的には、上記項目を考慮し、当社のリスク管理規程に基づき、財務への影響度を以て重要度を判断しています。気候関連リスクは、重要度に応じて対応されます。
3.気候関連リスクのマネジメントプロセス
リスクへの対応方法
特定した気候関連リスクは、当社のリスク管理規程に基づき評価され、それぞれ軽減・移転・受入・制御といった対応が検討されます。
特定したリスクへの対応方針は、サステナビリティ委員会で審議され、その審議結果が経営会議に報告され、最終的には経営会議で審議され、議長である社長執行役員が決定します。
4.西部ガスグループのリスクマネジメントへの統合
グループガバナンス委員会は、西部ガスホールディングス株式会社の社長執行役員が委員長を務め、定期的(原則年2回)に開催されます。グループガバナンス委員会では、西部ガスグループに関するリスクについて審議・決議し、取締役会に報告します。
気候関連リスクに関しても、当社のリスク管理規程に定められたシステムに基づき、他のリスクと同様にグループガバナンス委員会で審議され、重要なリスクと特定された場合は、当社グループのリスクマネジメントへ統合されます。
全社リスクマネジメントの詳細は内部統制に係る体制整備の基本方針をご参照下さい。
- ※西部ガスグループとは、当社有価証券報告書に記載の連結子会社を含みます。
指標と目標
当社は、気候関連のリスクを軽減・適応するため、また気候関連の機会を最大化するため以下の目標を設定しました。
2050年カーボンニュートラルの実現
西部ガスグループは、2050年カーボンニュートラルの実現に挑戦します。
また、この実現に向けて、2030年の中間目標を掲げ、取り組みを推進しています。
-
- ※1 当社グループおよびお客さま先における2030年断面のCO2排出削減貢献量(2020年〜)
- ※2 現在の当社グループおよびお客さま先のCO2排出量(約300万トン/年)の約2分の1に相当
- ※3 国内外における電源開発、FIT電源、調達を含む
- ※4 供給するガス全体にカーボンニュートラル化したガス(メタネーション、水素、バイオガス、カーボン・オフセットLNG等の手段で製造または調達したガス)が占める割合
目標1:CO2排出削減貢献量
取り組みの柱 | 指標 | 2022年度実績 | 2023年度実績 | 2030年度目標 |
---|---|---|---|---|
天然ガスシフト | 石油、石炭からの燃料転換、省エネ高効率機器の販売、海外事業の推進 | 28万トン | 28万トン | 58万トン |
ガスの脱炭素化 | カーボン・オフセット都市ガス/LNGの販売およびe-methane(合成メタン)の導入 | 0.8万トン | 1.0万トン | 37万トン |
電源の脱炭素化 | 再エネ電源の開発、調達 | 0.9万トン | 1.4万トン | 6万トン |
ひびき発電所の稼動および小売電気事業における非化石電源化率上昇 | 実績なし | 実績なし | 46万トン | |
事業活動への取組み | グループ施設の低・脱炭素化、社用車EV化、ペーパレス化および森林保全活動の推進 | 0.06万トン | 0.1万トン | 3万トン |
当社グループおよびお客さま先CO2排出削減貢献量 | 29.8万トン | 30.5万トン | 150万トン※ |
※2030年断面(2020年比)
取り組み実績:
- ・重油等からの天然ガスへの転換
- ・高効率機器販売(エネファーム、エコジョーズ、ハイブリット給湯)
- ・海外事業による天然ガス推進
- ・カーボン・オフセット都市ガス販売
- ・再エネ電源取扱量の拡大(国内の電源開発、FIT電源)
- ・事業活動におけるCO2削減の取り組み(社用車削減、森林保全活動など、遊休地への太陽光発電設備の設置)
算定方法:
- ・天然ガスへの燃料転換による削減貢献量・・・転換前の燃料と転換後の天然ガス使用に伴う排出量の差を算定
- ・高効率機器普及による削減貢献量・・・従来機器と高効率機器の使用時における排出量の差を算定
- ・海外事業による天然ガス利用による削減貢献量・・・海外のエネルギー需要地における従来エネルギーと天然ガス使用に伴う排出量の差を算定
- ・カーボン・オフセット都市ガス販売による削減貢献量・・・カーボン・オフセット都市ガスとオフセットするCO2クレジット量を算定
- ・再エネ電源取扱量の拡大による削減貢献量・・・日本の火力発電所の平均排出係数と再エネ電源種毎の排出係数の差により算定
目標2:再エネ電源取扱量
取り組みの柱 | 指標 | 2022年度実績 | 2023年度実績 | 2030年度目標 |
---|---|---|---|---|
電源の脱炭素化 | 国内外における電源開発、FIT電源、調達含む | 5.1万kW | 6.1万kW | 20万kW |
- 取り組み実績:
- 国内の電源開発、FIT電源
- 算定方法:
- 国内の電源開発、FIT電源、調達の合計
目標3:ガスのカーボンニュートラル化率
取り組みの柱 | 指標 | 2022年度実績 | 2023年度実績 | 2030年度目標 |
---|---|---|---|---|
ガスの脱炭素化 | 供給するガス全体に占めるカーボンニュートラル化したガスの割合 | 0.4% | 0.4% | 5%以上 |
- 取り組み実績:
- カーボン・オフセット都市ガス販売
- 算定方法:
- 西部ガスグループの都市ガス販売量に占めるカーボン・オフセット都市ガスの割合
事業活動における負荷低減
オフィスのCO2排出量の抑制
指標 | 2021年度実績 | 2022年度実績 | 2023年度実績 | 2023年度目標 |
---|---|---|---|---|
オフィスCO2排出原単位(床面積) | 53.9s-CO2/m2 | 53.1s-CO2/m2 | 48.4s-CO2/m2 | 51.5s-CO2/m2 |
- ※2021年度:連結子会社36社
- ※2022年度:連結子会社34社
- ※2023年度:連結子会社42社
-
- 目標:
- 統一係数で算定した、オフィスのCO2排出量(原単位:床面積あたり)を、2016年度実績から毎年度1%削減する
- 施策:
- 空調・照明等の設備の運用、および更新・改善等により削減
- 結果:
- 省エネに努め、目標を達成しました。
オフィスのCO2排出量(床面積あたり)
- ※統一係数:地球温暖化対策計画における2030年全電源平均CO2排出係数(0.37kg-CO2/kWh)を使用
- 実係数:当該年度の全電源平均CO2排出係数を使用
ガス製造工場のCO2排出原単位の抑制
指標 | 2021年度実績 | 2022年度実績 | 2023年度実績 | 2023年度目標 |
---|---|---|---|---|
工場のCO2排出原単位(製造量) | 15.6g-CO2/m3N | 15.4g-CO2/m3N | 15.4g-CO2/m3N | 15.7g-CO2/m3N |
- ※2017年度〜:連結子会社7社(ひびきエル・エヌ・ジー、西部ガス熊本、西部ガス長崎、西部ガス佐世保、島原Gエナジー、九州ガス圧送、筑後ガス圧送)
-
- 目標:
- 統一係数で算定したCO2排出原単位を2016年度実績(統一係数)から毎年度1%削減する
- 施策:
- 設備運用の見直しによるプラント燃料使用量の削減および主要設備の効率的運転によるプラント電力量の適正化
- 結果:
- 工場のCO2排出原単位の抑制については、プラント用燃料使用の適正化、および主要設備の効率的運用によるプラント電力の適正化に努め、目標を達成しました。
生産時の温室効果ガス排出原単位
- ※過年度データを再計算したため、データを修正しています。
熱供給工場のCO2排出量の抑制
指標 | 2022年度実績 | 2023年度実績 | 2023年度目標 |
---|---|---|---|
熱供給のCO2排出原単位(製造熱量) | 59.6kg/GJ | 56.4Kg/GJ | 60.0kg/GJ |
- ※対象:西部ガステクノソリューション
実績データ
GHG排出量
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |||
---|---|---|---|---|---|
絶対量 (t-CO2) |
原単位 (t-CO2/千円) |
絶対量 (t-CO2) |
原単位 (t-CO2/千円) |
絶対量 (t-CO2) |
原単位 (t-CO2/千円) |
50,817 | 0.00015 | 52,672 | 0.00018 | 50,449 | 0.00014 |
- ※2021年度・2022年度のバウンダリー(集計対象範囲)は、2023年度のバウンダリーに合わせて再計算しています。
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |||
---|---|---|---|---|---|
絶対量 (t-CO2) |
原単位 (t-CO2/千円) |
絶対量 (t-CO2) |
原単位 (t-CO2/千円) |
絶対量 (t-CO2) |
原単位 (t-CO2/千円) |
29,659 | 0.00009 | 25,969 | 0.00006 | 29,136 | 0.00008 |
- ※2021年度・2022年度のバウンダリー(集計対象範囲)は、2023年度のバウンダリーに合わせて再計算しています。
スコープ3排出量 カテゴリー |
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
絶対量 (t-CO2) |
原単位 (t-CO2/千円) |
絶対量 (t-CO2) |
原単位 (t-CO2/千円) |
絶対量 (t-CO2) |
原単位 (t-CO2/千円) |
|
1.購入した製品・ サービス |
32,978 | 0.0001200 | 33,765 | 0.000099 | 35,949 | 0.000102 |
2.資本財 | 50,230 | 0.0001900 | 57,776 | 0.000170 | 84,879 | 0.000241 |
3.燃料・ エネルギー関係 |
541,644 | 0.0019940 | 567,050 | 0.001672 | 572,399 | 0.001626 |
4.輸送(上流) | 82,107 | 0.0003000 | 82,347 | 0.000242 | 86,945 | 0.000247 |
5.事業から出る 廃棄物 |
2,313 | 0.0000090 | 2,444 | 0.0000072 | 2,059 | 0.0000059 |
6.出張 | 102 | 0.0000004 | 307 | 0.0000009 | 522 | 0.0000015 |
7.雇用者の通勤 | 915 | 0.0000030 | 905 | 0.0000027 | 907 | 0.0000026 |
11.製品の使用 | 2,646,355 | 0.0097500 | 2,530,733 | 0.0074650 | 2,602,863 | 0.0073932 |
13.リース資産 | ー | ー | ー | ー | 8,030 | 0.000023 |
合計 | 3,356,644 | 0.0123700 | 3,275,328 | 0.0096614 | 3,394,553 | 0.009642 |
- ※端数処理をしているため、合計が合わない場合があります。
・2021年度は、分社化及びバウンダリー拡大のため、
西部ガスホールディングス、西部ガス、西部ガス熊本、西部ガス長崎、西部ガス佐世保、西部ガスエネルギー、西部ガス都市開発(西部ガス興商より社名変更)、西部ガスリビング、西部ガス情報システム、西部ガス・カスタマーサービス、ひびきエル・エヌ・ジー、西部ガステクノソリューション、西部ガスライフサポート、九州ガス圧送、大牟田ガス、久留米ガス、筑後ガス圧送、日本ウェルド、北九州管工、熊本管工建設、西部ガスリアルライフ福岡、西部ガスリアルライフ北九州、西部ガスリアルライフ熊本、西部ガスリアルライフ長崎、西部ガス設備工業、九州八重洲、八仙閣、エスジーケミカル、エネ・シード、ファイブ、島原Gエナジー、TERASO、大牟田ガスエネルギー、福岡中央魚市場、エスジーグリーンハウスの36社が対象(連結子会社47社のうちデータ把握が困難かつ環境負荷の小さい会社を除く。西部ガスグループ売上全体の92%をカバー)
・2022年度については、
西部ガスホールディングス、西部ガス、西部ガス熊本、西部ガス長崎、西部ガス佐世保、西部ガスエネルギー、西部ガス都市開発、西部ガスリビング、西部ガス情報システム、西部ガス・カスタマーサービス、ひびきエル・エヌ・ジー、西部ガステクノソリューション、西部ガスライフサポート、九州ガス圧送、大牟田ガス、久留米ガス、筑後ガス圧送、日本ウェルド、北九州管工、熊本管工建設、西部ガスリアルライフ福岡、西部ガスリアルライフ北九州、西部ガスリアルライフ熊本、西部ガスリアルライフ長崎、西部ガス設備工業、九州八重洲、八仙閣、エスジーケミカル、エネ・シード、ファイブ、島原Gエナジー、福岡中央魚市場、エスジーグリーンハウス、ベストサプライの34社が対象(連結子会社45社のうちデータ把握が困難かつ環境負荷の小さい会社を除く。西部ガスグループ売上全体の93%をカバー)
・2023年度については、
西部ガスホールディングス、西部ガス、西部ガス熊本、西部ガス長崎、西部ガス佐世保、西部ガスエネルギー、西部ガス都市開発、西部ガスリビング、西部ガス情報システム、西部ガス・カスタマーサービス、ひびきエル・エヌ・ジー、西部ガステクノソリューション、西部ガスライフサポート、九州ガス圧送、大牟田ガス、久留米ガス、筑後ガス圧送、日本ウェルド、北九州管工、熊本管工建設、西部ガスリアルライフ福岡、西部ガスリアルライフ北九州、西部ガスリアルライフ熊本、西部ガスリアルライフ長崎、西部ガス設備工業、九州八重洲、八仙閣、エスジーケミカル、エネ・シード、エネ・シードひびき、ファイブ、島原Gエナジー、福岡中央魚市場、エスジーグリーンハウス、エストラスト、トラストコミュニティ、エストラスト不動産販売、建和住宅、吉川工務店、SGインキュベート、SGインキュベート第1号投資事業有限責任組合、SGインキュベート第2号投資事業有限責任組合の42社が対象(連結子会社45社のうちデータ把握が困難かつ環境負荷の小さい会社を除く。西部ガスグループ売上全体の99%をカバー)
※原単位の分母は、対象会社の売上高合計
温室効果ガスの排出実績・削減目標(不動産事業:西部ガス都市開発)
実績 | 単位 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度削減目標 |
---|---|---|---|---|---|
温室効果ガス (SCOPE1) |
t-CO2 | 2,123 | 2,335 | 2,389 | 2023年度実績より、 1%削減 |
温室効果ガス (SCOPE2) |
t-CO2 | 5,787 | 6,909 | 6,608 | |
温室効果ガス (SCOPE1+2) |
t-CO2 | 7,911 | 9,245 | 8,997 | |
温室効果ガス排出量原単位 (SCOPE1+2) |
t-CO2/m2 | 0.06811 | 0.06921 | 0.06603 |
- ※2021年度は22施設、稼働床面積116,156m2
2022年度は27施設、稼働床面積133,570m2
2023年度は28施設、稼働床面積140,478m2 - ※集計対象範囲は、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(省エネ法)において報告義務のある、西部ガス都市開発が保有、管理するすべての物件(自社使用を含む)です。
また、温暖化ガス排出量はすべて調整後CO2換算係数を用いて算出しています。また、温暖化ガス排出量はすべて調整後CO2換算係数を用いて算出しています。
取り組み
気候変動への取り組み
気候変動をはじめとするさまざまな環境問題を解決するための取組みは、総合サービスグループである西部ガスグループにとって、大きな社会的責任のひとつです。西部ガスグループは、環境性に優れた天然ガスを始めとするクリーンエネルギーの普及拡大と高度利用等を通じて、気候変動への取組みに積極的に対応してきました。国内での脱炭素政策を支持し、2050年の脱炭素社会実現に貢献するため、グループ各社の事業活動における省エネ活動を推進しています。
原材料の調達から運送、製造、使用のプロセスにおける環境負荷とCO2排出量を削減するために、LCA(ライフサイクル分析)を行った結果、ライフサイクルの中で、最もCO2排出量の多い「お客さま先での排出量」の抑制が大きな課題となっています。
具体的には、石炭や石油から化石燃料の中では最もクリーンな天然ガスへの燃料転換、産業用・業務用ガスコージェネレーションシステムやエネファーム、高効率給湯器などの高効率ガス機器の普及拡大、海外における天然ガスの高度利用等により、CO2削減に取り組んでいます。
ライフサイクルアセスメントによるCO2排出量
ライフ サイクル |
CO2排出量 (千t-CO2) |
||
---|---|---|---|
2021 年度 |
2022 年度 |
2023 年度 |
|
採掘※2 (SCOPE3 カテゴリー1) |
33 | 34 | 36 |
燃料・エネルギー関連 (SCOPE3 カテゴリー3) |
542 | 567 | 572 |
運送 (SCOPE3 カテゴリー4) |
82 | 82 | 87 |
事業活動 (製造) (SCOPE1,2) |
80 | 78 | 79 |
事業活動 (SCOPE3 カテゴリー2、カテゴリー5.6.7.13) |
53 | 61 | 96 |
お客さま先 (燃焼) (SCOPE3) |
2,646 | 2,531 | 2,603 |
合計 | 3,437 | 3,354 | 3,474 |
- ※2023年度よりライフサイクルアセスメントの内訳を見直したため、2021年度に遡って修正しております。
トランジションボンド
トランジションボンドの発行は、西部ガスグループのカーボンニュートラル実現への取り組みをステークホルダーの皆さまにご理解いただくことや、当該取り組みに関する資金調達基盤の強化および安定化を図ることを目的としています。
カーボンニュートラルへの取り組みを進めていくための資金調達の枠組みとして、「西部ガスグループ グリーン/トランジション・ファイナンス・フレームワーク」を策定しました。
詳しくは、こちらのページをご覧ください。
業界団体やプロジェクトへの参画
西部ガスは、1947年の設立当初から日本ガス協会に参画しています。
日本ガス協会は、都市ガス事業者の団体であり、都市ガス事業の健全な発展を図るとともに、天然ガスの普及拡大、エネルギーの安定供給と保安の確保、環境問題への対応を通じて社会的貢献を果たすことを目的としています。国内で約200のガス事業者や公営事業者が会員になっています。
国が2050年のカーボンニュートラル社会実現を目指す方針を示したことを受け、日本ガス協会は、カーボンニュートラル達成に向けた「カーボンニュートラルチャレンジ2050」を策定しました。
具体的な取組としては、@徹底した天然ガスシフト・天然ガスの高度利用(石油・石炭から、よりCO2排出量の少ない天然ガスへの燃料転換、コージェネレーションシステム・燃料電池等の高効率機器の普及拡大)、Aガス自体の脱炭素化(メタネーションや水素等の利用)、BCCUSや海外貢献等の取組(CO2を回収・利用・貯留する技術の開発や日本国内のガスに関する技術の海外展開、カーボン・オフセットLNGの活用)の3つを掲げています。都市ガス業界ではこれらの多様なアプローチに取り組み、これらを複合的に組み合わせて、2050年のガスのカーボンニュートラル化に挑戦しています。
西部ガスグループは、日本ガス協会の動向を踏まえ、2021年9月に「西部ガスグループカーボンニュートラル2050」を策定し2050年カーボンニュートラルの実現に向けて日々チャレンジしています。
まずは、2030年までに、CO2排出削減貢献量150万トンの目標を掲げ、お客さまおよび地域社会のカーボンニュートラルの実現に向けて事業活動を通じ貢献していきます。
現在西部ガスクループは、パリ協定をはじめとした地球温暖化防止策に関する各種合意に基づく政策を支持しています。また、日本政府が脱炭素化の実現に舵を切ったことを支持しており、国の気候変動に関する法規制である省エネ法や温対法を遵守します。現在西部ガスグループは、省エネ法・温対法に則り、年1回行政へ、エネルギー使用量、省エネルギー目標の達成状況、エネルギー削減計画、温室効果ガス排出量を報告しています。
また、西部ガスは、福岡市地球温暖化対策市民協議会の活動に会員として賛同しています。福岡市地球温暖化対策市民協議会は、地球温暖化対策の推進に関する法律の規定に基づき、市民・事業者・行政が協力して、地球温暖化対策のための積極的な実践活動の推進を図ることを目的とした組織です。
GXリーグ
-
当社は、当社グループやサプライチェーンにおけるCO2排出削減の推進を目的に、2024年4月1日より「GXリーグ※1」に参画いたしました。「GXリーグ」は、企業のCO2排出削減や脱炭素事業の投資促進を目的に、2050年カーボンニュートラル実現と社会変革を見据えて、GX(グリーントランスフォーメーション)に積極的に取り組む企業が、同じ目標を掲げる企業群や官・学と共に協働しながら、議論と実践を行う場として創設されましたものです。
当社グループは、2021年9月に「西部ガスグループカーボンニュートラル2050※2」を公表し、多方面から脱炭素に向けた取り組みを進めてまいりました。GXリーグへの参加を通じて、当社グループにおけるCO2排出削減への取り組みを加速させ、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献してまいります。 -
- ※1 「GXリーグ」の詳細に関しては、以下ご参照ください
https://gx-league.go.jp/ - ※2 「西部ガスグループカーボンニュートラル2050」の詳細に関しては、以下ご参照ください
https://hd.saibugas.co.jp/news_release/detail/2021/pdf/nr041.pdf
【環境省】脱炭素先行地域「阿蘇くまもと空港周辺地域RE100産業エリアの創造」
-
西部ガス・西部ガス熊本は、環境省の「脱炭素先行地域」に選定された「阿蘇くまもと空港周辺地域RE100※1産業エリアの創造」等に関する再エネ電力供給に係る連携協定※2を、熊本県等と締結しました。
西部ガス熊本は本連携協定に基づき「くまもと地域みらいエネルギー※3」を2025年1月に設立し、エリア内を中心に再エネ電源の集約、2025年4月から熊本県内の法人のお客さまを対象に電力供給を開始いたしました。
また、西部ガスは、小売電気事業者として脱炭素先行地域内に建設された再エネ電源等を買い取り、地域エネルギー会社を介して、同地域内を中心にお客さまに供給する予定です。 -
- ※1 RE100とは、企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブがあり、世界や日本の企業が参加しています。
環境省HP https://www.env.go.jp/earth/re100.html - ※2 西部ガス(株)、西部ガス熊本(株)、熊本県、益城町、西鉄自然電力(同)、(株)肥後銀行、(株)熊本銀行の7者で連携協定を締結
- ※3 西部ガス熊本(株)、西鉄自然電力(同)、熊本県、益城町、(株)肥後銀行、(株)熊本銀行の6者で設立。
くまもと地域みらいエネルギーのホームページ https://kcm-energy.com
天然ガスシフト
石油・石炭からの天然ガスへの転換、船舶燃料のLNG転換、省エネ・高効率機器への転換などにより、天然ガスシフトによる低炭素化を加速します。
クリーンエネルギー天然ガス
-
化石燃料の燃焼生成物の発生量天然ガスは、石炭や石油など他の化石燃料と比べて、燃焼時に生成されるCO2やNOx(窒素酸化物:光化学スモッグの原因物質)が少ないエネルギーです。この天然ガスをマイナス162℃まで冷却し、液化したものをLNGといいます。西部ガスは海外の産地からLNGの形でタンカー輸送し、ガス製造工場でガス化してお客さまにお届けしています。LNGは、液化の際に硫黄分などを完全に除去しているため、燃焼時にSOx(硫黄酸化物:酸性雨などの原因物質)をほとんど生成しません。
- ※LNG:Liquefied Natural Gas
- ※関連ページ 「天然ガスの特性」はこちら
石油・石炭からの天然ガスへの転換
石油・石炭を熱源とするお客さまに対して、低炭素化に貢献する天然ガスやLPガスへの燃料転換を推進しています。

省エネ高効率機器の拡大
トランジション期(エネルギー転換期)については、引き続き、省エネ高効率のガス機器の利用促進、また、省エネ・省CO2およびレジリエンス(安定供給・安全確保)強化の観点から、分散型エネルギーの普及促進を通して、CO2排出量の削減に貢献してまいります。
LNGバンカリング事業
船舶への燃料供給を行う「バンカリング船」の建造や入出港に向けた関係者協議等の準備を進め、2024年4月より事業を開始しました。環境負荷の低いLNG燃料※を取り扱う本事業を通じて、カーボンニュートラル社会の実現に向けた温室効果ガス排出量低減に貢献してまいります。
- ※船舶燃料として使用されている重油に比べてLNG燃料は環境負荷が低く、硫黄酸化物(SOX)や粒子状物質(PM)の排出は約100%、窒素酸化物(NOX)は最大 80%、二酸化炭素(CO2)約30%の削減が見込まれる。仮に年間10万トンのLNG燃料を供給した場合、船舶燃料を重油からLNGに転換することによる二酸化炭素削減量は約10万トン−CO2/年が見込まれる 。
ガスの脱炭素化
メタネーション技術の導入および水素・バイオガスの活用などにより、ガス自体の脱炭素化にチャレンジしています。
未来を創る西部ガスのカーボン・オフセットLNG
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カーボン・オフセットLNGとは、天然ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスを、新興国等における環境保全プロジェクトにより創出されたCO2クレジットで相殺すること(カーボン・オフセット)により、地球規模では、この天然ガスを使用してもCO2が発生しないとみなされるLNGです。2022年度より福岡・北九州地区の業務用のお客さまへ販売を開始しました。今後は、段階的に販売エリアや対象となるお客さまを拡大していく予定です。
- ※西部ガスサイトの関連ページ「カーボン・オフセットLNG」はこちら
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J-クレジットの活用拡大
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西部ガスグループは、「西部ガス カーボンリデュースクラブ(ボイラー)※1」を創設し、販売する都市ガス・LPガス・LNG(液化天然ガス)などを燃料とする業務用ボイラーをお使いのお客さま※2を対象にCO2排出量削減に関する取り組みを行っています。国が認証する「J-クレジット制度※3」を活用し、お客さまが重油などの燃料から都市ガスやLPガス、LNGなどへの燃料転換により削減したCO2排出量を、西部ガスが取りまとめて認証申請しJ-クレジットを創出、お客さまに対しては、削減したCO2排出量に応じた金額を還元します。これまでは、CO2排出規模が小さく、単独ではJ-クレジット制度参加のメリットが少なかったお客さまも、「西部ガス カーボンリデュースクラブ(ボイラー)」に入会することで、J-クレジット登録認証に関わる手続きやコストが不要となるほか、還元金を利用することにより、燃転後のボイラーの維持費低減を図ることができます。なお、この取り組みで創出したJ-クレジットの一部を各種イベントでのCO2オフセットなどに活用しています。
- ※プレスリリースはこちら
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本取り組みのイメージ図
- ※1「西部ガス カーボンリデュースクラブ(ボイラー)」に入会し参加していただくには所定の条件に了承していただく必要があります。
- ※2 主に都市ガス・LPガス・LNGへの燃料転換によりボイラーを導入したお客さまが対象です。
- ※3 省エネルギー機器の導入や森林経営などの取り組みによる、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。本制度により創出されたクレジットは、低炭素社会実行計画の目標達成やカーボン・オフセットなど、様々な用途に活用できます。
ひびきエル・エヌ・ジー基地内でメタネーション実証を開始
西部ガスグループでは、e-methaneの導入に向け、ひびきエル・エヌ・ジー(株)のひびきLNG基地内でメタネーション実証を開始しました。本実証は地域資源である再生可能エネルギーの余剰電力を活用して製造した水素や近隣工場から発生する副生水素、未利用水素、未利用CO2を有効活用したメタネーションにより、e-methane製造コストの低減と環境価値提供を目指します。
e-methaneの供給(実証運転)は、2025年度に実施する予定です。
詳細はこちらをご覧ください。

下水バイオガス由来の水素を用いた純水素燃料電池の運用を開始
電源の脱炭素化
再生可能エネルギーの普及拡大や新たな事業の展開により、電源の脱炭素化を推進します。
再生可能エネルギーの開発・調達
現在運転中の再エネ電源に加えて、新たな電源の開発に注力し2030年時で20万kWの再エネ電源取扱量を目指しています。また、電源開発に加え、他社が運営する再エネ電源からの電力の調達についても、情報収集や受入体制の整備など準備を進めてまいります。

再生可能エネルギーの普及
非FIT電源の開発や高度化法義務達成市場からの非化石証書の調達により、2030年時における西部ガス電気の販売量50%の非化石電源化を目指しています。西部ガス電気の新料金プラン(CO2ゼロ)を新設し、調達した非化石電源をお客さまへ提供し、地域の脱炭素化に貢献してまいります。
ひびき発電所の稼働
九州電力および西部ガスは、北九州響灘地区(ひびきLNG基地隣接地)において天然ガスを燃料とした発電所の開発に向け合同会社を設立し建設を進めています。本発電所は、発電方式にCO2排出量が少ない最新鋭のコンバインドサイクル※を採用し、将来的にはカーボンフリー燃料(水素等)の活用も検討していきます。本発電所の開発により、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、九州地域の発電設備の低・脱炭素化を進めることが可能となります。
- ※ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた高効率の発電方式
太陽光発電設備の無償提供事業の展開
お客さま先における再生可能エネルギー電気の普及拡大を目的に、太陽光発電設備の無償提供事業(PPA)を推進し、ガス・電気の小売販売とのセット販売や、メンテナンス体制の整備を進めています。
事業活動における取り組み
西部ガスグループ施設の低・脱炭素化と、森林保全の推進や、働き方改革を通して、CO2排出量を削減しています。
社用車運用改善およびペーパレス化
グループ会社間での社用車シェアリングや公共交通機関の利用促進を通した社用車の削減、事業活動におけるPCやスマホなどITツールの環境整備による会議や保管文書等のデジタル化、「グリーン商材」の積極的な採用など、環境に配慮した取り組みを進めています。
働き方改革
従業員の環境意識醸成ならびに省エネの推進を目的に、「オフィスカジュアル」「在館制限」「在宅勤務やモバイルワークなど時間・場所にとらわれない働き方であるテレワークの活用によるオフィスの効率化」を推進しています。
産学官との連携
学術機関等と連携した脱炭素化に資する新たな技術の導入に関する取り組みなど、様々な分野でCO2排出削減に取り組んでいます。
地域との連携
当社グループの事業エリアを中心に、地域のカーボンニュートラルの実現に向けた連携協定を締結し、行政と一体となった取り組みを推進しています。
環境教育
カーボンニュートラルについて分かりやすくお伝えするため、小学生にもできる実験動画やマンガで学べる「カーボンニュートラボ」をホームページに公開しています。地球温暖化ってなに? カーボンニュートラルってどうしたらいいの? など、カーボンニュートラルについて子どもから大人までわかりやすく紹介しています。
(動画監修:福岡市科学館)
関連サイトはこちら
脱炭素につながる新しく豊かな暮らしを創る国民運動「デコ活」応援団参画
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環境省は2050年カーボンニュートラル及び2030年度削減目標の実現に向けて、国民の行動圏用、ライフスタイル変革を強力に後押しするための「デコ活」を展開しています。西部ガスおよび西部ガス都市開発は本取り組みに賛同し、「デコ活応援団」に参画しています。
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