2030年に創立100周年を迎える当社グループは、未来の社会を支える価値創出のため、何に取り組み、実行していくべきか。多様な視点からそのヒントを得るべく、2024年1月に社外取締役4名との意見交換会を開催し、「ガバナンス」「人的資本」「環境への取り組み」という3つのテーマを中心に意見を伺いました。
エネルギーとくらしの総合サービス企業グループとして、
環境・社会・ガバナンスの持続可能性を模索
● 今回の意見交換会の司会はグループガバナンス部(サステナビリティ委員会事務局)を担当する、沼野良成 取締役常務執行役員が務めます。
沼野
西部ガスグループでは、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、「西部ガスグループカーボンニュートラル2050」を策定し、取り組みを進めています。天然ガスシフトによる低炭素化を進めた上で、メタネーション(※1)や水素利用によるガスの脱炭素化、再生可能エネルギーの普及拡大による電源の脱炭素化を進めています。
- (※1)水素と二酸化炭素を反応させ、都市ガス原料の主成分であるメタンを合成する技術
沼野
また、来るべき社会における「ありたい姿」を描く「西部ガスグループビジョン2030」の実現に向けて、「地域貢献」「責任」「和」を経営の基本理念とし、「エネルギーとくらしの総合サービス企業グループ」として、より良い未来をリードしていく行動の方針を設定しています。
サステナビリティマネジメントの視点では、経営理念および「西部ガスグループ企業行動指針」に定めた7つの指針に基づき、取締役会の監督のもと、経営会議、サステナビリティ委員会という重層的な組織体制で遂行しています。
今回は、社外取締役の皆さんからサステナビリティの主要課題である、次の項目について、多様なご意見をいただきました。
- 1.ガバナンス(社外取締役の役割)
- 2.人的資本
- 3.環境への取り組み
【丸林信幸】ホールディングス移行
3年目、取締役会の活性化を評価
● 最初は、丸林公認会計士事務所 所長の丸林信幸氏。2013年より当社取締役を務める同氏の目に、ホールディングス移行3年目の西部ガスグループはどう映っているのか、伺いました。
沼野
まずは「ガバナンス」について、社外取締役の役割や経営判断において重視されること、西部ガスグループの評価についてご意見をお願いします。
丸林氏
社外取締役の基本的役割は、ひと言でいえば経営の監督です。社外取締役という独立した立場を通じて、社会的信頼や企業価値を守ること、同時に、企業価値の向上につながるチャレンジを後押しすることが役割だと思っています。
西部ガスグループはホールディングス体制移行(※2)3年目となり、取締役会の審議が非常に活発になってきた点は評価しています。サステナビリティについては経営の重要事項に組み込まれていますので、中期経営計画や長期ビジョンの策定、モニタリングに関して、さらに議論が深まることを期待しています。
例えば、中期経営計画など重要な事項については、我々も経営会議にオブザーバーとして出席し、それを踏まえて検討していくことも考えられます。
- (※2)2021年に純粋持株会社体制に移行
沼野
当社グループの重要施策の意志決定プロセスに、社外取締役が関わることは非常に大切だと考えています。特に近年は、想定できない外的要因が増えており、計画実行のモニタリングは大切だと改めて感じています。次に、当社グループの「人的資本」に関して、どのようにお考えでしょうか。
丸林氏
急速に少子高齢化が進む日本において、男女共同参画は率先して推進すべきだと思います。公表されている「サステナビリティレポート2023」には女性管理職の割合についても目標値を記載していますが、将来を見据えて西部ガスグループの新規採用者に占める女性の割合についても対外的に目標値を定めてはどうでしょう。(※3)
また、Web記事コンテンツ「明日の暮らしLABO」を見ると、さまざまな取り組みをされていることが分かります。
これまで仕事を通じて見聞きしてきた経験から、比較的若いときにグループ外に出てみる出向経験はキャリア形成の上で非常に有効だと感じていますので、そのようなプログラムがあってもいいかもしれませんね。
- (※3)西部ガス(株)単体の採用の男女比は、近年は女性が3割近くまで上昇。新卒採用のみを前提とせず、キャリア採用含めてフレキシブルに活躍できる採用形態の整備を推進
沼野
西部ガスグループのカーボンニュートラルへの挑戦や、その他にお気づきのことがあればお聞かせください。
丸林氏
激変の時代の中、安心・安全・安定供給という基本は守りつつ、カーボンニュートラルに関してグループで力を出し合い乗り越えれば、業績を含めてさらに成長できると思います。一方で、中長期の持続的成長を図るためには、バランスシートが大事です。インフラ業界は自己資本比率が低い傾向にありますが、これからも投資は続くと思います。投資と収益性の適切なバランスを図り、事業のポートフォリオ管理をより強化することと思います。
【光富彰】成熟したガス事業、
新たな取り組みが問われる
● 続いては、西日本シティ銀行の代表取締役専務取締役などを経て、エフエム福岡取締役相談役を務める光富彰氏です。金融機関という高い水準のガバナンスが求められる経営を知る同氏に、西部ガスグループへの意見を伺いました。
沼野
まずは「ガバナンス」について。社外取締役としての役割、西部ガスグループの評価、経営判断に際して重視している点などをお聞かせください。
光富氏
社外取締役の役割は、短期的ではなく中長期的な視点で、企業価値の向上にどう貢献できるかということではないでしょうか。企業価値の向上は、当然、全取締役の責任ですが、“社外”という客観的な立場から意見を表明していくことが必要だと考えています。また、社外取締役は独立した存在であり、社内取締役の方が言えないような意見を代弁することも重要な役割です。
ガバナンスについては、西部ガスグループは歴史が長く、組織の体制は確立されていると思います。ただし、ホールディングス体制移行からまだ日が浅く、グループをどう束ねていくのかはこれからの課題だと言えます。
沼野
おっしゃる通り、ホールディングス体制移行により多種多様な文化の企業が傘下に入りました。いかにガバナンスを利かせていくかというところが我々の責務であり、会社ごとの教育をレベルアップしていくことが重要であると認識しています。
光富氏
西部ガスグループは九州を代表する企業グループであり、教育のシステムが非常に充実していると評価しています。中でも企業内大学の「ソウゾウ大学」は素晴らしい取り組みです。ガスという成熟した事業だけではなく、新たな事業開拓ができる人財の育成に人的資本を割く。これは良い方向性です。
ソウゾウ大学の講座風景
西部ガスグループが創業100周年を迎える2030年までに、変革意識を持ち未来のために挑戦し続ける「未来ソウゾウ人財」を育成することをミッションとする企業内大学です。約3ヶ月のプログラムの中で、起業家や有識者からのインプットを経て、課題探索・解決のアイデア創出に取り組みます。沼野
「ソウゾウ大学」は、当社の代表取締役社長 道永幸典が学長となり、変革をリードする人財を育成する組織横断のプロジェクトとして、自らの夢を提案できる場を目指しています。
ブランド力を生かし、
カーボンニュートラルをリードする
沼野
当社グループでは「西部ガスグループカーボンニュートラル2050」をもとにカーボンニュートラルアクションプランを定め、具体的な取り組みを示しています。特に、メタネーション導入に向けて産学官が共同で実証事業を開始し、2030年度の商用化を目指しています。気候変動への対応は当社グループにとってのリスクであると同時に、新たなビジネスチャンスでもあるということを重要な経営課題であると認識しています。この点についても、ご意見をお願いします。
光富氏
カーボンニュートラルの実現は、一企業の経営努力だけでは限界があるというのが現実です。しかし、西部ガスグループはエネルギー業界を代表する企業ですので、カーボンニュートラルへと向かう社会全体をリードしていってほしいと考えています。
そのためには、技術開発やサービスの展開など、既存事業の外にある新しい分野への展開が必要です。西部ガスグループには長年培ってきた「ブランド力」という圧倒的な強みがあります。カーボンニュートラルの実行に期待しています。
西部ガスグループでは、2030年までに150万トンのCO2排出削減貢献量を目指しています。
- ※1 当社グループおよびお客さま先における2030年断面のCO2排出削減貢献量(2020年度〜)
- ※2 現在の当社グループおよびお客さま先のCO2排出量(約300万トン/ 年)の約2分の1に相当
- ※3 国内外における電源開発、FIT電源、調達を含む
- ※4 供給するガス全体にカーボンニュートラル化したガス(メタネーション、水素、バイオガス、カーボンニュートラルLNG等の手段で製造または調達したガス)が占める割合
【部谷由二】“問い”により、
経営に異なる視点を加える
● 続いて、西日本鉄道の代表取締役副社長執行役員、西鉄ストア取締役会長などを歴任し、学校法人西鉄学園理事長を務める部谷由二氏との意見交換を紹介します。
沼野
まず、社外取締役としての役割をどのようにお考えでしょうか。
部谷氏
私自身、取締役とはいえエネルギー事業での経験はなく、業務執行の詳細までは把握できません。そのため、意見ではなく質問が多くなりますが“質問”を繰り返すことで、社内で本当に有効な議論がなされているか、視点のもれはないかといった「気づき」を得てもらえるように、と考えています。
社外の立場だから、固定観念がなく自由に意見が言えます。違和感があれば遠慮なく言うことが私の役割と捉えています。
経営判断の場面では、長期的な視点で合理的な判断がされているか、机上の計算ではなく将来的なチャンスやリスクがどの程度把握されているかを、特に見ています。
多様な人財の採用が、
企業ブランドの強化につながる
沼野
部谷取締役が在籍されていた西日本鉄道は公益事業が多く、当社グループに通じるところがあると感じています。西部ガスグループの「人的資本」の取り組みについて、いかがお考えでしょうか。
部谷氏
西部ガスグループのグループ報などを見ていると、人財育成に関しては先に進んでいる印象を持っています。若い人が、自分の意見を積極的に発信して行動することが評価されていますよね。コミュニケーションを重視する文化が根付いていると感じます。多様な意見を持つ人財こそが、西部ガスグループブランドの更なる強化につながると思います。
ダイバーシティに関してもしっかり取り組まれていると理解しています。女性が働きやすい環境を整備して、ジェンダーバランスが取れた状態で議論がなされることを目指してほしいです。
西部ガスグループのDE&I重点領域
沼野
西部ガスグループは従来から人財育成に力を入れてきており、会社の財産になっていると感じています。カーボンニュートラルを実現する上でのご意見、西部ガスグループが持続的に成長するための課題についてもお聞かせください。
部谷氏
サステナビリティに関する取り組みは、もはや企業自身の存続の問題になっていると認識しています。特にカーボンニュートラルは西部ガスグループにとって事業継続の前提であり、目標を明確にして、設備投資のあり方、事業のバランスや方向性を多様な視点で丁寧に検討しつつ、着実な取り組みをチャレンジングに進めていくことが求められます。
西部ガスグループの強みは多様な人財と地域の信頼であり、地域のインフラであるエネルギー事業を安全・安心に継続していること。その役割を今後もしっかり果たしていただきたいです。
【池内比呂子】生活者に近い
エネルギー事業、その責任は大きい
● 最後は、テノ.ホールディングスの代表取締役社長である池内比呂子氏。保育園事業を中心に女性のライフステージの課題解決に取り組む起業家は、歴史ある西部ガスグループをどう見ているのでしょうか。
沼野
まずは社外取締役としての役割や、経営判断に際して重視している点についてお聞かせください。
池内氏
私は自分で会社を立ち上げたベンチャー精神と、取締役で唯一の女性ということでダイバーシティの視点でご提案させていただければと考えています。私の経験が当社にとっては新鮮で少しでもヒントになるかもしれないと思い、自由に発言しています。
西部ガスグループのガバナンス評価に関しては、さまざまな計画の実行に、真摯に取り組まれている印象があります。グループの中でも私が一番好きなのは、障がい者が生き生きと働く場づくりに取り組む西部ガス絆結株式会社です。現場を見せていただくと、障がいのある方たちがそれぞれのスキルを活かして働いています。しかも黒字経営。社会課題に向き合うひとりの起業家として、憧れます。
沼野
当社グループの人財育成について、ご意見を伺えますか。
池内氏
企業の成長は人財次第だと考えています。ベンチャー精神を養うためには学びと挑戦の風土が必要で、社員が成功体験を積むことが会社の成長につながるでしょう。会社の規模が大きくなってきたときの難点は、社員が経営層に会う機会や、企業のミッションを共感できる場が少ないことだと思います。
光富氏も話されていましたが、「ソウゾウ大学」は大変素晴らしい取り組みです。
沼野
当社グループのダイバーシティの取り組みについてはいかがでしょうか。
池内氏
ダイバーシティ宣言をつくられていますが、多くの企業ではその実行が課題になっています。一番の根本はジェンダー平等であり、女性の活躍や多様性が自社にとってどんなメリットになるか、しっかり認識し合い共感して進めていくことが重要だと思います。
沼野
取締役会の中で池内取締役が唯一の女性です。また、管理職全体に占める女性の割合を2030年に15%にするという目標に対しても4.5%とまだまだです(2022年3月末時点)。単に女性管理職が出てくるのを待つのではなく、意思をもって戦略的に進めなければと改めて強く感じています。
西部ガスグループDE&IのKPIと
達成度合いについて
グループDE&I 定量目標
重点取り組み | KPI指標 | 内容 | 実績 | 目標 |
---|---|---|---|---|
2022年度 | 2030年度 | |||
ジェンダー平等 | 女性管理職率 | 管理職に占める女性の割合 | 4.5% | 15% |
男性育休取得率 | 男性育休取得数/配偶者出産数 | 45.8% | 100% |
沼野
最後に、環境への取り組みについてご意見をお願いします。
池内氏
カーボンニュートラルの実現に向けて、九州のリーダーとして挑戦していく大きな責任があると考えています。一方、環境への取り組みを企業が行うには大きなコストがかかり、今も事業としての試行錯誤が続いているかと思います。
企業だけでなく、行政との連携も視野に入れ、コストを抑えながら事業へのシナジーを生み出せる仕組みをつくっていくことが求められます。
西部ガスグループの強みは、生活者に近い事業で、多くのお客さまを抱えていることです。時代に寄り添い、変化しながら成長しつつ、お客さまに何を提供していくのか考え続けなければなりません。
沼野
生活者に近いというのは、いろいろな暮らしの困りごとの受け皿になれる可能性があるということです。さまざまな提案を社内からも集め、事業化していきたいと考えています。
池内氏
「西部ガスグループビジョン2030」で目標が掲げられているので、そこに魂を込めて進めてほしいと思います。会社の存在意義を皆さんで共有し、ステークホルダーに共感していただいてファンを増やしながら、まずは2030年の目標を達成するため、共に頑張ってまいりましょう。
2030年、ガス会社から、
ステークホルダーと歩む
サステナブルな企業へ
今回、さまざまな知見と経験を持つ社外取締役4名から、サステナビリティ経営に関する現時点の評価やご意見をいただきました。
西部ガスグループでは、2030年を目指し、「ガバナンス」「人的資本」「環境への取り組み」を一層強化します。そして、未来の日本を支える「エネルギーとくらしの総合サービス企業グループ」への変革を推進していきます。
※記載内容は、2024年1月に社外取締役4名と開催した意見交換会のものです。